傷だらけの天使に ページ31
繋心
『でね。ちゃんと話せたよ。』
繋心「…おう。」
恥ずかしそうにカップのチョコアイスをスプーンでつつきながらジャンプを読む俺の隣で寧々と顔を合わせ含羞むA。
その笑顔はバレーをしてた頃みたいに輝いて見えた。
A『あのね。私…病院行こうかなって思ってるの。』
繋心「へー。いってら。」
()「きをつけてねー」
A『ぇ?ぁうん。行ってきます。』
ベチャッ
店内にはカラカラと換気扇の回る音と()がアイスをこぼした音だけか響いた。
繋心「いやいや、ちょとまて。病院?どこの?」
()「頭じゃないの?バカだし。」
繋心「いや。歯医者だろ。コイツ食っても太らねぇからって調子乗ってチョコ系ばっか食ってんだろ。カロリーの意味すらわかんねぇっぽいし。」
()「眼科じゃない?この前電柱とぶつかって謝ってたし」
A『えっと…私の事バカにしてる??』
繋心・()「「おう/うん」」
えぇぇ?!っと困った顔して慌て出すA。
A『いや、頭でも歯でもなくて手、診てもらおうって思って。』
左手をグーパーして困った顔をするA。
()「でも…原因は分からないって言われてなかったっけ?」
繋心「まぁ。コイツが決めたんだ。行く価値はあるだろ。」
やっと。
やっとコイツの時計が動き始めたんだ。
歯車が揃ったんだ。顔を上げ歩き始めたんだ。
俺に出来るのはコイツの選択を応援すること。口出すことじゃない。
繋心「…行ってこいよ。」
あの時言えなかった言葉と押せなかった背中。
今ならバシッと押せる。
小さくて強がって1人で抱え込もうとする不器用なコイツは。
''コート上の天使''
誰かがAにつけた異名。
Aにピッタリだった。
広く狭いコートをヒラリと舞って会場中を、敵さえも魅了する。
でも。
コイツはコートの上だけの天使なんかじゃねぇ。
どこまでも真っ直ぐで傷つきやすいくせに強がりな馬鹿野郎。
どこでだっていつだって舞って魅せられる。
奥村Aだ。
A『うん。ありがとう、繋ちゃん。』
どこまでも飛んでけばいい。
傷だらけの天使に誰よりも大きな幸せが訪れればいい。
俺も踏み出さなきゃいけない時なのかもしれない。
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作者名:ツナ缶本仕込み | 作者ホームページ:http://@ya love
作成日時:2021年10月1日 20時