初恋の子。 ページ3
▹▸及川
ギャラリーから浴びせられる黄色い声援に適当に笑顔で手を振る。
さ〜て。飛雄ちゃんはドコかな〜。
影山「…超攻撃型セッターで攻撃もチームでトップクラスだと思います。」
・・・・・・みっけ。
影山「…俺…サーブとブロックはあの人見て覚えました。」
久しぶり。“ 王様”クン。
思い詰めた表情をしてる影山に、ニコニコと笑いながら綺麗に磨き整えている手をヒラヒラと振る。
及川「やっほー飛雄ちゃん久しぶり〜育ったね〜」
ゲーン!!とよく分からない効果音を立て俺から距離をとる小さい子を無視して影山の方へ歩み寄る。
影山「実力は相当です。」
明らかに俺を警戒してるのか俺から目をそらすことは無いけどビビってはいるらしい。
可愛い可愛い後輩チャン。
及川「元気に“ 王様”やってる〜??」
どこまでもどこまでも成長が目まぐるしい。
才能がありすぎる。
誉高い名誉の“王様 ”じゃなくて孤独な独裁者の“王様 ”。
まだ影山は“ 王様”やってるのかな。
独りよがりの孤独なプレー。
どんなに強くても“繋げ ”なきゃ意味がない。
ーー「第3セット始めます!!!」
その声に一斉に選手たちがコートへと戻る。
煽るように影山を見てから烏野一人一人を見回す。
ふ〜ん。
知らない顔が半数以上だけど警戒する程じゃない。
監督「さっさとアップしてこい。」
及川「は〜い。」
パイプ椅子をギシッと鳴らし俺を見上げる監督にピースして踵を返す。
コートに駆け足で向かう影山に、ふと、視線を走らせると視界の端に見覚えのある女の子がいた。
…ッ!
ーー間違えるはずが無い。
髪の毛の長さや顔つき、身長だって変わってる。
それでも絶対に間違える訳がない。
及川「ッ……Aちゃん!!」
俺の初恋の子。
今まで何人かの女の子と付き合ったけど、ずっと好きだった子。
バレーを愛していてバレーを失ってしまった子。
誰よりも努力家で一生懸命な子。
A『お久し、ぶりです。』
ふんわりと微笑む姿は相変わらず可愛らしいけど
やっぱり昔みたいな輝きは無くなってた。
それでも。
俺の胸は高鳴り、今も尚彼女を好きだと教えてくれる。
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作者名:ツナ缶本仕込み | 作者ホームページ:http://@ya love
作成日時:2021年10月1日 20時