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拾陸 ページ16






「やぁ、お待たせ。行こうか」

「どこに」

「うふふ、素敵なところ」


 しのぶちゃんに礼を言い、待たせてしまった実弥さんを連れて蝶屋敷を出た。

 行く場所は可愛らしいお嬢さんが働く可愛らしい甘味処。昼前のこの時間帯なら、客も少なく話しやすいだろう。
 え? まあ、可愛らしいお嬢さんに逢う為、が勿論だとも。


「甘味処は初めてかい?」

「ああ」


 彼のその面容で甘い物を一人、黙々と食べるところなんて想像出来ないけれど。
 いや、寧ろ想像出来るかも。

 例の甘味処は蝶屋敷から近いので、すぐに到着出来た。よくしのぶちゃんと姐さんで行くくらいなのだ。
 店に入れば、旦那さんが迎え入れてくれた。


「おや、太宰くん」

「こんにちは、旦那さん。朋子さんは?」

「いやー、今日は休みなんですわ」

「残念……」


 どうやらあのお嬢さんは居ないらしい。

 旦那さんと軽い挨拶を交わし、奥の座席へと彼を誘導する。
 四角い卓袱台で向かい合うように座る。


「此処の抹茶と餡子は絶品でね! おすすめは外郎と羊羹なのどけど……。君には、やっぱりおはぎが好いかな?」

「! 覚えてたんだな……A」

「忘れないさ、実弥さん」

「いい加減“さん”はやめろィ」

「懐かしいねぇ、それ」


 しかし、彼が私を覚えていたことに驚きだ。否、彼は優しい。当然なのかもしれない。
 何故だか、申し訳ない気持ちになった。


「……親父は」


 彼が口を開く。


「Aが去っていった後すぐ恨みを買ったヤツに殺された。それから暫くして、俺と玄弥以外、皆死んじまった……」

「……鬼、か」

「お袋だった」

「!」

「暗くて分からなかったが、それが日の光を浴びて崩れた時、気が付いた。唯一救えた玄弥を町に残して、鬼を狩った」

「それで、鬼殺隊に入り、挙句の果てに柱まで上り詰めた、と」

「ああ」


 瞼を伏せた傷跡だらけの彼。十年程前の彼とは違い、笑わなくなった彼。
 話を聴かずとも、其の姿を一見しただけでどれだけ凄惨な過去だったかが佳く判る。

 私のように、もともと愛していない家族だったなら、独りだったならまだしも。
 彼、不死川実弥という男は、父親には恵まれなかったが、心優しい母親に愛され、愛した弟妹が居たのだ。其れを奪われたのだ。


「……其の傷跡は、君が?」

「鬼を引きつけるためにな。どうやら俺の血は特別らしい」

「成程、稀血か」


 にしても、何て痛々しい傷跡だろう。




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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時

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