【文スト】一般人の中原です その二

　・　 ページ49

.



「中也さんの弟は確か十八の筈。何らかの原因で子供になった可能性がある」





「な、成程……それにしても芥川先輩。よく分かりましたね、弟さんの方だと」









中也だと勘違いをした樋口が感心する。









「確かに、見た目は兄弟とも良く似ているが、決定的に異なるところがある」





「そ、それは……？」









「中也さんの方が、弟より目付きが悪い」









「悪かったな、悪人面で」









「……ゲホッゴホッ！！」









芥川の後方から中也が現れた。

芥川は口に手を当てて盛大に咳をした。

咳が治まって、芥川は落ち着いた表情に戻る。









「お疲れ様です、中也さん」





「手前、それで誤魔化したつもりか」









じっと芥川を睨む中也だったが、横を通り樋口が抱えるAを見た。









「お前部屋で待ってなきゃダメだろ」





『あいっ！』





「反省してねぇな、こいつ」









中也は樋口からAを受け取ると、昇降機に乗り込み、芥川達に振り返った。









「今日は弟の手前だから何も云わねぇよ。弟が世話になったな」









そう云うとドアが閉まって上へと昇って行った。









それから、中也が自宅へ戻った頃に、Aの姿が戻ったとのこと。









.









数日後、偶然バイト中のAを見掛けた樋口は、









「……本当だ、弟さんの方が優しい顔している」









見た目殆ど中也ではあるが、決定的に目付きが異なる事を知った。



.

【あとがき】→←　・　

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す