【文スト】一般人の中原です その二

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森Side



「知らない方が良い、か……」





A君と別れ、帰りの車の中でふと呟いた。









数年前、中也君の弟の存在を知り、特定した孤児院を尋ねた。

「心を読む異能力」と知っていた私は、敢えて彼に触れた。





倒れた彼は、二日間目を覚まさなかった。





丁度、中也君が席を外して不在だった時に、A君は目を覚ました。



そして、真っ直ぐ私を見て開口一番こう云った。









『森鴎外さん、俺はマフィアには入りませんよ』









中也君の意向で、弟にはマフィアの事を秘密にする事になっていた。

だから、弟の異能についても中也君には黙っていた。

そのことについてはA君も納得した。









「ねぇA君。もし私が中也君に、君をマフィアに引き入れると云えば、彼はそれに従うだろうね。首領の命令なら、尚更彼は断らない」





『もしそんな事をしたら、貴方の事を全て世間にバラします』





「あははっ！ マフィアの首領を脅す気かね？」









面白いね君は、と私は笑う。





しかし実際、笑い事ではない。





彼には、それが容易に出来るのだ。









「分かった。君の勧誘はまたの機会にするよ」



『次に聞かれても、同じ答えですよ』









結局、彼の云う事は本当だった。



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