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一言で言うと、猫ちゃんは凄い人だ
今は試合中のタイムアウト、相手は東京の梟谷
梟谷は全国にもよく行く強豪校だから、こっちが若干押され気味…

だったのだが、タイムアウト中、猫ちゃんがチームの各々にアドバイスをして回っている
みんなびっくりした様子だったけど、納得いく節があったからか、あの無気力で表情筋が死んでる国見ちゃんですら笑顔でお礼を言っていた

俺は一体何を言われているんだろうと思った
そして俺の番

猫咲「及川は、まずそこに座って、話はそのあと」

???
猫ちゃんが指したのはベンチ
なんで俺だけ?と思いながら座ると、猫ちゃんは俺の足元に片膝を床につけて座り込んで、俺のバッシュを脱がし始めた


及川「?!?!え、ちょ、猫ちゃん?!何してんの?!」

猫咲「お前足軽く捻っただろ、あんま痛くないからってそのままにするな…誰かコールドスプレーとかあったら貸してくんない?」

金田一「は、はい!どうぞ」

猫咲「ん、あんがと…)シュー(はい、一応これでいいはずだけど、一回ちょっと休憩しな、いいですか?監督」

入畑「たっく、捻ったならちゃんと言いなさい!矢巾、一旦及川と交代だ」

矢巾「は、はい!」

及川「えーーー?!」

岩泉「「えーーー?!」じゃねえ!今怪我しちゃいけねえだろが!」

及川「このぐらい平気だよ!」

猫咲「そんなこと言ってると、1ヶ月バレー出来なくなるかもだぞ!」

及川「そんな大袈裟な…」

猫咲「いや、俺も軽い捻挫ほっといたらほんとに1ヶ月のドクターストップかかったからな、技術があるのに、高校生最後の大会に出れねえんじゃ悲しいだろ」

そう言いながら、猫ちゃんは立ち上がって俺の頭を撫でる
ただそれだけのことなのに、なぜか俺は納得しちゃった
多分普段ならもうちょっと粘ってただろうに…

正直俺は、猫咲亜があまり好きではなかった
中学2年の中総体県予選、俺はレギュラーに選ばれて、白鳥沢のウシワカと猫ちゃんと戦った
完敗だった、たった一つしか変わらないのに、圧倒的実力の差を見せつけられた気がした

猫ちゃんはと言うと、なんでもないような顔をしていたから、これだから天才は…、と、試合後ずっと思っていた

でも、今の猫ちゃんの表情は、俺を心配しているのもあるだろうけど、なぜか悲しそうな顔をしていた
まるで、俺を“なにか”と重ねているような

こんなにすごい人が、なんでそんな表情をするんだろう?




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作者名:桜並木 | 作成日時:2020年6月6日 16時

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