誰？

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その日の夜。家でぼんやりしていたら、古いスマホに電話がかかってきた。


相手は言わずもがな、グク。









それに応じたい気持ちと、躊躇う気持ちが自分の中でせめぎ合う。



けど、机の上に置いておいた新しいスマホを見て思いとどまる。




私が前に進むために、リセットするために、ユンギ先輩はこれをくれたんだ。




自分のために。…いや、グクのために、ここは我慢しなきゃ。





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プルルル プルルル プルルル プルルル プルルル
プルルル プルルル プルルル プルルル プルルル



..



...



その音が嫌になって、思わず耳を塞ぐ。



やけに長く感じたそれが、やっと切れた。


かと思えば、すぐに次の呼出音が鳴り響く。









ごめん、ごめんね。グク。今これをとったら、同じことの繰り返しになるよ



今まで、頼りすぎたよ。私。



依存しちゃうよ。このままだと。



これをとったら、二度と、戻れなくなるよ。








そう自分に言い聞かせて、その音が鳴り止むのを待った。




お願い、グク。もうやめて。








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そうして、数分後。やっとその音が途絶えた。



私にはそれが、何十分も、何時間もの時間に思えた。






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『……よかった、』






けど。


ほ、と安心したのも束の間。





今度はピコン、とラインの通知音が鳴り響いた。それにびく、と肩が跳ねる。






おそるおそる、スマホを手にする。ラインのアイコンの右上の赤丸の中の数が、どんどん、どんどん増えていく。






1、2、3、4.5.6……10、20、30。









震える手で、3Dタッチを使って、こっそり内容を覗き見る。






『……グク、』





"電話出てよ"


"Aと話したい"


"今日のこと、本当にごめん"


"俺がどうかしてた"


"ねぇ、A"








"俺のこと、嫌いになっちゃった？"









それを見た瞬間、思わず既読をつけてしまいそうになった。



けど、









『……っ、ごめん、ごめんなさい、……



許して、』







できなかった。

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