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ちょうど炒め終えたタイミングで、ピンポーンと軽快なインターホンが鳴る。
「ただいま!」
『おかえりなさい』
「何か食べた?家ん中めちゃいい匂いする」
『それが、今まだ作ってて』
「何食べんの?」
『特に決めていなくて』
「ん?決めてないのに炒めたの?」
『何にでも使えそうな食材炒めているので、松倉さんがもしまだ食べてなければ一緒にどうかなって思ったんですけど……』
「いいの!?食べたい!」
『じゃあ作りますね。パスタとスープでもいいですか?』
「十分すぎ。俺も作るの手伝うね」
"手洗ってくるから待ってて"と洗面所に向かう松倉さんは、子供っぽい可愛さも、頼りになるお兄さん感もあって不思議。
「おまたせ。俺とりあえずパスタ茹でるのにお湯沸かすね」
『はい、お願いします』
2人並ぶには少し狭いキッチン。
動く度、肩や腕があたる。
やっぱり喫茶店のマスターをしているだけあって、手際が良くて助かる。
元カレの海人は、こういう時全然手伝ってくれずにゲームをしてたし、手伝ってくれても不安でずっと目を離せなかったから。
「メガネくもる。邪魔だな」
そう言った松倉さんは、隣で伊達メガネを外す。
「ん、どした?」
『……なんでもないです』
メガネを外す仕草も、外した後の顔もドキドキしたなんて言えない。
住まわせてもらっている人間がそんな変なこと言ったら絶対ダメ。
「本当になんでもない?」
『はい』
少し屈んで目線を合わせてジーッと見つめてくる。
目を逸らせずにいると、伸ばしてきた手で私の髪を耳にかけた。
驚いて動けずにいると、そのままさっきまで松倉さんがかけていたメガネを私にかけてきた。
「ふはっ、似合うね!可愛い」
『あの、』
「でもAちゃんがかけるとちょっと大きいね。顔ちっちゃいからか」
頭をポンポンと撫でてきて、ニコッと笑う。
『……お湯、沸きました』
「そうだね、茹でよっか」
明らかに照れている私を宥めるのが上手いのかもしれない。
やっぱり余裕があるお兄さんだ。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時