ちぐはぐな[リズム]は歌い手様に好かれました。Part4! (ページ33)

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160.最後のページ33

蜂蜜side

『はぁ···』

綺麗に片付いた部屋の中で、息をついた。

ライブ当日の朝。

元々置かれていた家具と、機材以外は殆ど無くなった、殺風景な部屋。

『帰ってくる事、無いのかなぁ···』

こんなときでも以外と冷静になれるものなのか、とぼやっと考えていた。

『あっ』

やり忘れてた事あった、と独り言を呟きながら備え付けの机に置かれた、愛用していたパソコンを弄る。

三日前の夜にまふくんに手伝って貰いながら仕上げたもの。

それを、19:00に投稿されるように設定しておく。

恐らく、自分の手でマウスをクリックして投稿する事は叶わないから。

そのパソコンの横に置かれた、沢山の手紙。

その内の一つを手にとった。

封筒の中の便箋を取り出して、元々の文章の下に一つ付け加えた。

彼に、想いを自分の口から伝えられない事。

そんな、謝罪の気持ちも込めて。

『···ありがとう』

何に対してかは自分でも分からない。

その言葉が、零れた。

何かを断ち切るように頭を軽く振り、立ち上がってライブに持っていく物を詰め込んだバッグを肩にかける。

そして、ここに来た時に渡されたこのシェアハウスの鍵。

それを手紙の横に置いた。

『─────さよなら』

もう二度と、この部屋に戻ってくる事は無いのだ。

私は、部屋を出てゆっくりと扉を閉めた。