第37話 ページ39
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記憶を取り戻し、指輪を預けた太宰さんと再会を果たした。
「……あれ? するとあの時の少年…」
初めて太宰さんと会う前、不貞腐れた様子で道にしゃがんでいた小さな男の子。
あの綺麗な双貌と、物の言い方…
特徴を幾つかあげると太宰さんは頷く。
「乱歩さんのことだろうね」
「……ですよね」
集まったピースが凄い勢いで配置され、パズルが完成していく。
「あぁ……あの時も確か腹が立ってぶん投げた気がします」
思い出す思い出す。
喧嘩相手とは仲良しに戻れただろうか。
ちゃんと家に帰れたから、探偵社でまた会えたのだと思いたい。
と、考えたところでぐっと身を起こした。
「ん? なぁにA、積極的だね」
「違いますよ」
向かい合って、太宰さんを膝の上に乗せた状態。
配慮してくれているのか全体重はかけられていないようだ。
其れでも容易には抜け出せないのだが。
「退いて頂けますか」
「どうして?」
無理矢理押し倒そうかとでも思っていたが、太宰さんの笑みに浅はかな考えは捨てる。
此の人が何も考えてない訳がない。
緩慢とした動作で、腕の中に囲われた。
包帯だらけだから薬品特有の匂いがするのかと思いきや、寧ろ其処らの女性よりも好い匂いがする。
加えて直ぐ上には、美しい顔があるのだ。
「………はぁ……」
最早、言葉もない。
深い溜め息を何だと捉えたのか、背中に回されている腕に力が入った。
「Aは、戻るの?」
戻る。
戻るって、何処へ。
「もう、英国に私を信じる人はいないんです。こうして異能力が次を日本と決めた以上は、日本で生活する予定ですが」
「まるで他人事のように話すね」
「未だ何も考えてないからですね」
取り敢えず、目の前の美人をどうにかしたい。
「中也が君を探していたよ」
「すると、置き手紙は見てくれたみたいですね」
まぁ大したことは書いていない。
「しかし予想以上に早く、探し物を見つけてしまいましたからね」
手を伸ばす必要もない。
太宰さんの胸の中心に触れる。
あの時と違って、ちゃんと温かい。
「……」
「……」
「……A、私だってドキドキするのだけど」
「今更ですか」
だけど、其の言葉は嘘じゃない。
顔を盗み見るとほんのりと頬を赤らめた太宰さんがいて、動揺した。
「え、シャツを脱がせてるだけですよね」
「…何言ってるか分かってるの?」
「指輪を返して貰おうと_ってうわッ?!」
強く抱き締められ、また布団に倒れ込む。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時