・ ページ12
Fyodor side
「……はい?」
肩を叩かれたような、そんな弱い感触を感じた僕が後ろを向くと、どこか不機嫌な声で沙紗くんが唐突にそう問いかけてきた。
「ちょっと、沙紗!フョードルさんを巻き込んじゃ駄目だろ、お兄さんは関係無いんだから!」
「でもでも!ここはぜーったい、大人の人に決着を着けてもらった方が良いだろ!」
「そういう問題じゃないだろ……」
ふむ。これは一体どういう事なのでしょうか。さっきはAさんの事ばかり考えていたお陰で、彼らの話は一切聞こえてこなかった。……しかし、断る訳にはいきませんね。というか、断れそうに無い。もう既に、話はかなり進んでいるようですし。
「分かりました、僕で良ければ引き受けましょう。……ただ、事の経緯をお話してくれませんか?でないと、僕は公正な判断をする事が出来ない」
「もちろん!えーっとね……なんでこうなったんだっけ?」
「はぁ?何でついさっきの事忘れたんだよ」
ついさっきの事ですら忘れてしまう沙紗くんに、杏那くんはどうやら呆れ半分怒り半分……といった所でしょうか。
やはり、子供たちは元気ですね。僕もこのくらい、生力があれば良かったんですけれど。
「む……。そういう杏那はどうなんだよ!」
そう言いながら、沙紗くんは怒ったように頬を膨らませる。
しかし、片割れがそれに動じることは無かった。
「別に、お前との会話に使う脳の容量なんて無いから……」
「まぁまぁ、二人とも。1度、深呼吸でもして落ち着きましょう」
以前に聖女さまがしていた事を真似して、いがみ合っている彼らをどうにか落ち着かせようとしてみる。
ーーなんて、本当は宥める気は一切無いんですけれど。
僕はあくまでも、彼らの前で「優しい大人」という虚像のままで居たいだけだ。
そんな誠意の無い僕の仲裁が、ヒートアップした2人の少年たちの耳には届くはずもなく、彼らは僕抜きでの
「はぁ……」
彼らの議論内容があまりにも小さかったからでしょうか、僕の口からは自然にため息が出ていた。
さて、ここからどうしましょう。ーーあぁ、早くAさんが来てくれないだろうか。
そんな祈りも虚しく、その時の僕の元にAさんが駆けつけてくる事は無かった。
72人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
びねつ(プロフ) - 夜のお魚さん» お褒めいただきありがとうございます……😭😭そう言って頂けると凄く嬉しいです🥲応援を糧に更新頑張ろうと思います‼️👍 (2月27日 20時) (レス) id: 50028a7fa3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ