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約束 ページ8





「A!呼んだらすぐ来てね!
赤ちゃん抱っこしてもらうんだから!」

『わかってるよ。約束ね。』


予定日の40週が来た。
細かったアイのお腹は大きくなって動いている。


私は忘れたカメラを取りにホテルに向かった。
こんなところで忘れ物という失態だ。

出産に立ち合いたかったけど「踏ん張ってるところ あんまり見られたくない」と言われたので、結果よかったのだろう。


しかしまたここで失態。
スマホを病室に置き忘れた。
それほど私は気が正常ではないということか。


帰ろう、カメラじゃなくてスマホでも撮れないことはない。
そう思って踵を返した。
 

アイの幸せを心の底から願っていた。
きっとこれは嘘じゃない。正しい愛だ。



。。。。



「あんたフユミン?星野アイの友達だったよね?」


後ろから聞こえた男の声。背筋が震えた。
アイの出産間近のこのタイミングで。


アイは名字を公開していない。
しかも偽名を使って入院している。

ストーカー?それとも害悪ファン?

顔はフードを被っていてよく見えない。
少なくともスタッフ等の関係者ではない。


『...どこからアイの名字を入手したんですか。
回答次第で警察に通報することになります。』


男と向き合った。
ポケットに手を入れ、スマホを取り出すような仕草を見せた。

心臓がバクバク鳴った。怖かった。
スマホは持っていない、逃げるか追い払うか。
追い払う方がアイの為だ。


「くそっ、!!」

『っ、離して!!』


本当に通報されるかと思ったのか、男と掴み合いになった。
男女の力の差は明らかだった。
怖くて膝が震えて 視界もグラグラ。勝ち目はなかった。


『いや!!』

覆い被さってきた男の腹を蹴りあげた。
うつ伏せに踞る男、私は逃げた。

周りは山で足元は暗かった。
スマホもないから本能的に足を動かした。


病院はどっちだっけ、どっちから入ってきたっけ?
警察...交番はどこ?周りに人...民家は?

頭の中に自分の声が反響する。
けど暗くなり始めた森に、頼りになりそうな灯りはなかった。



鈍い音が頭に響いた。
視界は反転して、身体が動かなくなった。
額から何かが流れてくる。
頭に走った痛みから、何かで撲られたんだと悟った。



...あー、これ死ぬやつだ。たぶん無理。声も出ない。
スマホ…は無かった。
約束したのに。早く起きなきゃ。
アイの子を抱っこするって。


___まふくんと『またね』って。



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りる - 初コメ失礼します!!!いい感じに歌い手が推しの子に溶け込んでいて、もう好きです!!!!応援してまふ! (11月24日 18時) (レス) @page15 id: 088b936db2 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (10月19日 12時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨音雨音 x他1人 | 作者ホームページ:無いっス。  
作成日時:2023年8月1日 22時

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