雑音の街で ページ7
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アイはとりあえず偽名を使って入院した。
20週だったので復帰するにはかなりかかりそうだ。
私は一度東京へ帰った。
一人暮らしだから家の心配もある。
服も持っていきたかったし。
戸締まりを確認して家を出た。
田舎に身を置くのも悪くないな。
タクシーを拾うため新宿の交通が大きいところに向かった。
「あ、フユちゃん。久しぶりだね。」
歩いていると後ろから聞き慣れた声で呼ばれた。
振り返ると予想通りの人物が居たわけで。
『久しぶり まふくん。』
白髪の長身は目立たないわけでもない。
だが 新宿なんてごちゃごちゃしたところに居るので目に止まることはなかった。
雑音と音声が飛び交う街で、私たちはその一欠片に過ぎない。
「どこか出掛けるの?」
『そうなの、友達と一緒に都外に。』
「病み上がりなんだから気をつけてね。」
『もう元気だよ。』
まふくんもまふくんで仕事に向かう途中らしい。
数分で話は終わった。
「またねフユちゃん。」
『またね まふくん。』
たくさんの人の前では私は『フユミン』だ。
それが人に見せる私たちの姿。
案外『フユミン』も気に入っている。
「あ、Aちゃん、!」
小さな声で引き留められた。
今度は私の本名で呼ばれた。
「またね。また今度。」
少し重たい声色に聴こえたのは勘違いではなかったらしい。
最後に呼ばれたのが本名だったのは本当によかった。
なぜなら、まふくんに会うのは これが最後だったから。
。。。。
その後 またホテルに泊まった。
することと言えばアイの話し相手になることだけ。
仕事の愚痴や子どもの名前について。
「アクアマリンとかルビーとかいいよね!」
『...成長した子どもに同情する。』
アイの考える名前は壊滅的だった。
もう少し普通の名前にしてあげてほしいけど、きっとアイなら上手くいくか。
いやだめだな。説得せねば。
「Aの新曲、“ダイアモンドダスト”だったでしょ。
“ダイアモンド”とか良くない!?」
『私の子どもじゃないんだからさ。』
アクアマリンにルビーにダイアモンドって、キラキラネームを越えている気がする。
デレデレに子どもを甘やかすタイプなんだな。
「女の子ならアイドル...男の子なら俳優とか?」
『歌い手も歓迎中だよ。』
歌い手もいいねー、なんて呑気にしているが もう少しで予定日がくる。
何もなければいいけど。
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りる - 初コメ失礼します!!!いい感じに歌い手が推しの子に溶け込んでいて、もう好きです!!!!応援してまふ! (11月24日 18時) (レス) @page15 id: 088b936db2 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (10月19日 12時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
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