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伴う苦痛 ページ6





目を瞑って、数秒が経った時。
滅多に鳴らない音が着信を伝えた。

アイかな、と思って画面を見る。
表示された名前を見て 素早く起き上がった。


息を整えて 応答した。



『...もしもし、』

〔あ、もしもし。今大丈夫かな?〕

『うん、大丈夫だよ___、』



____まふくん。


名前を呼ぶ度、心がズキッと軋んだ。
苦い表情をしてしまった。


まふくんは【まふまふ】として歌い手の活動をする私の友人だ。
会って食事をしたことも、出掛けたことも、笑ったことも。
全て新しい記憶に刻まれ続けていく。

きっとこれからも。


〔少し元気ないね、しんどい?〕

『そうかな。そんなことないよ ありがとう。』


機械越しの声は、少しだけ気持ちを紛らわしてくれた。

『体調不良』『いいね』『そんなことないよ』
嘘を吐く度に息苦しくなった。


〔病院って言ってたからすごく心配したよ。〕

『なんか風邪拗らせちゃったみたいで。』

〔気をつけてね。〕


心地悪い返事を返した。
私はまふくんにも嘘を吐いてしまうんだ。


それから時間も忘れて長話をした。

今度ギター一緒に弾こう、美味しいお店見つけた、一緒に歌ってみた撮ろう。
まふくんとの雑談は終わりが見えない。
長い夜まで楽しい時間へと変えてしまった。


『あ、もうこんな時間だ。』

ふと時計を見ると、短針が真上にくる直前だった。
こんなに時間が過ぎていたんだと 少し驚いた。


〔本当だ。ごめんね こんな遅くまで。〕

『ううん、私も楽しかったよ。』


じゃ、またね。

また次の約束までして私は電話を切った。
これがいつもの私。


前までまふくんと話すことは楽しみだった。
歌うことも楽器を弾くことも。
食事やお出かけなどのプライベートでも。
今はそれらが少しだけ苦痛を伴う。


私が愛を知ってしまってから。


まふくんが好き。
友達じゃなくて、恋愛的に。
好き、大好き。
この感情を抑えられない。


でも この感情は間違っている。
歌い手としてファンを裏切る行動だ。

まふくんだってそうだ。
合わせて百万人を ゆうに超えるのファンがいる。

私だけでなく まふくんまで被害は広がる。
それが怖くて仕方なかった。


だから、この一件で少し距離が取れることを願っていた。
少し感情が薄まればいいな。


この恋がどうか実りませんように。
友達に戻れますように。
ファンを愛せますように。


一番星に祈りを捧げた。



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りる - 初コメ失礼します!!!いい感じに歌い手が推しの子に溶け込んでいて、もう好きです!!!!応援してまふ! (11月24日 18時) (レス) @page15 id: 088b936db2 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (10月19日 12時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨音雨音 x他1人 | 作者ホームページ:無いっス。  
作成日時:2023年8月1日 22時

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