遺言 ページ18
。
愛だとか嘘だとか。
大嫌いな言葉で、雑音が響く。
男が叫びながら逃げていった。
アイはドアに凭れかかって ぐったりしていた。
「アイ!!」
『救急車呼んだから!アイ!』
笑って呑気なことを喋るアイ。
大丈夫じゃないことは、アイ本人がわかっているはずなのに。
アクアが何とかしようとするのを抱きしめて止めた。
「ごめんね。多分これ、無理だぁ。」
力無いアイの声も。
心配するルビーの声も。
弱々しいアクアの声も。
アイの遺言さえも、聞いていられなかった。
「ダイヤはねぇ、歌い手さんになるのかな。
ギター上手いもんね。...Aにそっくりだよ。
きっと、きっとダイヤなら上手くいくよ。」
嫌だ。いやだ。
そんなこと聞きたくない。
そんな、遺言みたいに。
死ぬみたいじゃん?
アイは、アイなら...
何か、死なない理屈がほしくて。
「私がこんなことで死ぬわけないじゃん」って言ってほしくて。
きっとそれは叶わなくて。
「三人が大人になってくの、側で見てたい。
あんまり良いお母さんじゃなかったけど、私は産んで良かったなって思ってて。」
冷える指先が、広がる血液が。
残り少ない時間をわからせてくる。
わかりたくない。
否定したい。
自分の思考が最悪を肯定する。
「あ......これは言わなきゃ。
ルビー、アクア、ダイア...。
愛してる。」
この言葉は嘘じゃなかった。
今までで一番の笑顔で。
アイの涙を見たのは、これが初めてだった。
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。
死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。
呪いのように唱えても無駄なんだって。
どうしようもなかった。
「...A、Aは?
三人抱っこして、幸せになるんでしょ...
お世話手伝ってくれるって言ってたもんね。
ほら...まふまふくん達も帰りを待ってるよ。
私、ずっと応援するって...言ったから、」
やめて。
もうやめて。
『もう喋らないで、アイ。
ほら、まだ助かるかも知れないでしょ?
いや きっと助かる!アイだもん、こんなことで死なないよ、
約束したでしょ!?ずっと隣に居るって!!』
だから、死ぬわけないよ。
そうだ。そうだよ。きっとそうだ。
「...そっか、そっかぁ。
隣に居たんだ...ずっと、そうだねぇ、」
そうだね、そうだね。
その声はだんだん薄くなって。
幸せな家は、たちまち音を失った。
。
133人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りる - 初コメ失礼します!!!いい感じに歌い手が推しの子に溶け込んでいて、もう好きです!!!!応援してまふ! (11月24日 18時) (レス) @page15 id: 088b936db2 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (10月19日 12時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ