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「久しぶり、だね。」
「...」
相変わらず偏食が治らないのか、目の前に座る彼は甘ったるいミルクティーに、更にガムシロップを2つ加えた。
「今はレイカさんが彼女なんじゃないの。」
「知ってるんだ。」
聡はバツが悪そうに苦笑いして、ストローでミルクティーをかき混ぜた。
たまたま道端でばったり会ってしまって、固まって動けなかった私の手を引いて、喫茶店へと連れ込まれた。
手が震える。視線が泳いでしまう。背中に嫌な汗もかく。
外が寒いのに比べ、店内は暖房が緩く掛かっているのか、私には暑かった。
どうしてアイスではなくホットを頼んでしまったんだろう。
私は悪魔の汗のような濃いエスプレッソコーヒーに移る自分の顔を、出来る限り睨んだ。
「聞きたいことあってさ。」
「なに?」
早く帰りたい。帰って風磨の暖かくて大きな腕に抱きしめて欲しい。
もう、聡とは終わったの。
終わった恋をずるずると引きずるほど、私は乙女でもなければ子供でもない。
「菊池と付き合ってるって、本当?」
「聡には関係無いじゃない。」
「ある。」
やたらと食い気味に、少し前のめりで言うから、圧にまたやられそうになる。
いつもみたいにふにゃっとした愛嬌のある笑顔じゃなくて、キリッと真剣な目をする。
そういうところに、聡のオトコを感じて好きになったんだっけ。
「どうして?」
「菊池は、やめておいた方がいい。」
どうしてみんな、風磨はダメだって言うの?
「関係無いのに口突っ込まないで。」
「違う!レイカから聞いたんだ。菊池は...」
その先を聞きたくなくて、私は机を強く叩いて千円札を置いて出て行った。
聞いてもなんの得にもならない。
いいの。風磨がどんな人間であろうと、今が楽しければそれでいい。
なにかあればその時考えればいいの。後で後悔したっていい。
店を出ると、冷たくなった風が頬を切り、心地よかった。
早く家に帰ろう。風磨に早く会いたい。
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はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時