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Shori
「かなり寒くなったね。」
「そうだね。ついこの前まで暑かったのに。」
毎年、俺の誕生日の前後くらいに、季節は変わり始める。
最近じゃ、もう秋なんて無いんじゃないかと思うほどに、夏と冬の境目が薄い。
「勝利はさ、冬好き?」
「嫌いだな〜、寒いし。」
なにより、10月のハロウィンだとか、12月のクリスマスもそうだけど、日本の文化でもないのに、正月より盛り上がる。
確かに華やかではあるけれど、大人数で群れるのが苦手な方ではあるから、家で静かに過ごせる正月の方が好きだ。
「ふーん。そっか。」
「Aは?」
「んー、好きかな。」
「どうして?誕生日冬じゃないじゃん。」
ブランコを足で揺らしながら、空を見上げる彼女に聞いた。
「冬って、言葉を話す時に息が白く目に見えるでしょ?それが好き。」
嗚呼、彼女はやっぱり綺麗だ。
大きくぱっちりした目も、スラリと通る鼻筋も、ふっくらとした唇も、月の光と、消えそうに光る街灯と光も相まって、彼女の輪郭をも綺麗に光と陰で映し出す。
秋生まれの彼女のブルーベースの肌は、この季節になるとやけに透明感が増し、掴んでいないと消えてしまいそうなほどだ。
「勝利?」
「あぁ。確かに。言葉が白く目に見えるのは、いいね。」
「ふふ、勝利の事だから、バカにされると思ったのに。」
いつもなら憎まれ口を叩くところだったか。
彼女と2人きりのこの空間で、いつも会わない夜に会って、それが俺の誕生日で、なんか、いつもより特別感もあるし、いつもより彼女が綺麗に見える。
夜のせいか、慣れない季節のせいか、それとも今日というこの日だからなのか。
「明日も授業かー。」
「遅刻するなよ。」
公園を出て、彼女を駅まで送る。
数年前まで、家へ送っていたのに。なんて。
「菊池先輩とはどうなの?」
「んー、別に普通。そんなカップルみたいな事しない主義だし。」
そう言う彼女の耳元にキラリと光る星型のピアスが、月光に照らされて、俺の目に反射した。
眩しいのと、胸がギュッとなるのを避けるかのように、俺は反射的に目を瞑った。
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はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時