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小さい頃から、雨は嫌いだった。
外で遊べないし、傘は邪魔だし、濡れて気持ち悪いし。
高校生になれば、雨の日はいつも以上に電車が混んだ。
姉に子供が出来たと聞いた日も、弟が死んだ日も雨だった。
父に初めて怒鳴られた日も、母を悲しませ泣かせた日も雨だった。
勝利が変わった日も、また雨が降っていた日だった。
昔から雨の日はいい事が起きない。
「ねぇ、Aちゃん。」
「なに?」
「雨の日って、なにをするためにあると思う?」
土曜日の午前、出掛けようと話していたけれど、雨が降っていると聞いてまた後日にしようと提案したのは風磨だった。
まだ、雨が嫌いな理由を話していないのに、風磨は雨が降る度なにかと気にかけてくれる。
「知らない。考えたこともない。」
「まぁ、1番は外に出なくていいってことだよね。友達からの面倒な誘いにも "雨だから" って断れるし。」
「意外とそういうタイプ?友達からの誘いならいつでもどこへでも飛んでいきそうなのに。」
「ははっ、まぁ、確かにそれはあるかも。」
最近寒くなってきたから、家から持ってきたお気に入りのふわふわな白いブランケットを膝にかけて、ソファーに2人で座る。
何気なく点けていたテレビ番組では、数日続いている雨の影響を知らせていた。
「ねぇ、風磨。」
「なに?」
「指相撲しよ。」
「ほんと懲りないなぁ(笑)。」
「今日は勝てる気がするの!」
「はいはい。」
いつもハンデで、左利きの風磨は右手でやってくれる。
それでも今まで勝った試しがない。強すぎる。本当に。
「よーい、スタート!」
風磨の言葉で始まった指相撲は、モノの数秒で決着がついてしまった。
「ほらー、結局じゃん。」
「次は絶対勝つ。」
「はーい。次も俺の勝ちでーす。」
嫌味たっぷりに舌を出して笑う風磨に、一発グーパンチをお見舞いした。
"痛い!ねぇ!痛い!" なんて大袈裟に痛がる風磨を、更にポカポカと叩いた。
「バーカ!風磨のバーカ!」
「うるさいなぁ。おりゃ!」
「うわっ、ちょっ!」
叩いていた腕を掴まれて、肩を軽くポンっと押されると、私の体はいとも簡単に後ろに倒れた。
ソファーの上で、風磨が私の上に跨った。
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はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時