あいつの双子【HQ】

・ ページ23

・及川side




「…」



俺の腕の中で固まっている彼女、影山A


兄とは違ってとても可愛い中学の後輩だ



「そろそろ離してもらえますかコラ」



及｢しゃべり方どうしたの？｣



「一応先輩だったみたいなので敬語使いましたオラァ」



及｢本当に敬語使う気ある？｣




Aちゃんは他の女子とは違って媚びないし、自ら近寄って来ない


その上、とてつもなく可愛いし面白いしバレーが本当に上手い


世間からは｢生まれ持った才能｣だとか俺の嫌いな｢天才｣だとか言われてる




けど彼女は“天才じゃない”




俺も初めて見た時は天才だと思わずにはいられなかった



だから中学に入学して来たとしても関わらないと思っていた



あの日までは









ある日女バレは休みの日なのに体育館からボールの音が聞こえた



及(3年の誰かが練習してるのかな)



休みの日までバレーしてるなんて相当なバレー馬鹿の顔を拝みたくて中を覗いた





そこに居たのはサーブ練習をしている影山Aの姿



打つ度に｢トスズレた！｣｢全然ダメだ…｣等呟く彼女



体育館に沢山転がっているボールを見て確信した




及(この子は天才なんかじゃないんだ…)




バレーが大好きで堪らないんだろう



だけどただのバレー馬鹿じゃなくて、人より何十倍も努力してきた子だ





及｢サーブ教えてあげよっか？｣




そう分かった瞬間、声を掛けずにはいられなかった




俺が居た事に驚いた様子だったが眉間に皺を寄せて




「どちら様ですか」



って言われたのは一生忘れないだろう









及｢Aちゃんって初めて会った時から辛辣だったよね〜｣



「そんな事ないですよ」



及｢でもサーブ教えてもらいに来る時だけ、すっごい笑顔で駆け寄って来て犬みたいだったよね〜｣



「国見！塩キャラメル持ってからあげる！」



及｢ねぇ及川さんの話聞いてる？！｣



「煩いから牛乳パンでも食べてて下さい！」



そう言って俺の好物である牛乳パンを押し付けてくるあたり本当…



及｢可愛いなぁ…｣



「ふぉ？！いい加減にしろ下さい！！！」




細い腰に手を回して抱き寄せた



及(どうしたら気付いてくれるんだろ…)



腕の中で暴れる可愛い可愛いワンちゃんを見て小さくため息をついた

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