ep1 ページ3
久しぶりの新鮮な空気
久しぶりの街の賑わい
久しぶりの――……って言ってたらキリないな、と思いつつ何年かぶりの故郷の土を踏んだ。
込み上げる感動の波を落ち着かせて街を歩き出す。
いやぁ、それにしても嬉しい偶然だった。まさか仕事で地球に帰って来れるなんて。
こうして依頼が来たから帰って来れたものの、それでもなければ忙しくて帰って来れなかっただろうな。
帰りたい気持ちは山々だったけど。
道行く天人とすれ違っても別にもう違和感は無かった。
長い間、宇宙で仕事してれば攘夷戦争なんてもう過去の話。事実、私の依頼主は大体天人なわけで。
そんなことを考えながら歩いていると人混みに流され、いつのまにか見知らぬ場所にいることに気が付く。
慌てて開いた地図は、自分の見ている景色と何一つ一致しなかった。
「……やばい、迷った」
うわぁ数年ぶりに帰ってきた故郷で船から降り立った瞬間、まさかの迷子……?
「あっはっは」
と笑ってみたものの、自分の声は想像以上にカラカラに乾いていた。
うん、真面目に考えようか。
新しい職場に初出勤なのに道に迷ったから遅れますって……?
え、ないない。そんな奴いたら間違いなくクビ。
クビになったら困るんだよ。私は地球に帰ってくるまでの旅費ですでに所持金ゼロなのだから。
そう、道に迷って笑ってる場合ではない。
いや待てよ、普通に人に聞けばいいじゃん。「この地図の所までどう行けばいいですか?」ってさ。
「そうそう、何も難しいことなんて――……」
よしよし、と思って顔を上げると喫茶店のショーウィンドウが視界に映り込んだ。その中には輝く抹茶パフェ。
「…………。」
急に思考停止した自分の頬を叩く。
いやいや待て待て。
さすがに私も社会人だ。いくら宇宙にいた間、好物の抹茶が食べられなかったからと言って……
いくら抹茶との幾年ぶりの再会だからと言って……
初出勤サボっていい理由にはならない。
そうならないならない。
「店員さん、抹茶パフェ一つ!」
あれ、おかしいな。
なんで私は店の椅子に座って抹茶パフェを注文しているんだろう?
おかしいなぁ。
……うん、でもさ、もう注文しちゃったし。店の人きっと一生懸命作ってくれてるし。キャンセルするのも申し訳ないから――……
「食べるしかないよね」
こうして私は記念すべき初出勤を斬り捨てたのだった。
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ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時