204#縁側と織田組短刀 ページ13
(Side,Nothing)
縁側で甘酒を口にする不動と、
その横で書物を手にしている薬研。
「なぁ、薬研」
「何だ、不動」
「主はさぁ、浮世離れしてるよなあ」
「……まあ、そうだな。
他の本丸の審神者よりも浮いた存在ではある」
俗に“織田組”と呼ばれる彼ら二人。
薬研は比較的早くこの本丸に顕現し、
不動は大分遅れて顕現した。
「主はよぉ、何か、初めて逢ったって気がしないんだよ」
「あぁ、それは思ったことがあるな。
まあ、俺の分霊というか、
大将には一振り目の俺がいたからな。
分霊通して何となく覚えてんのかもな」
「それは薬研とかの話だろぉ?
俺のはどう説明するんだよ」
「……そうだな」
不動行光の素朴な疑問だった。
顕現して初めて目にしたのは、
優しい笑顔で此方を見ている折。
と、それに寄り添うAの姿だった。
不動は、折の瞳に惹かれた。
不思議だ。初めてなのにそうでない気がした。
まるで、何処かで逢ったことのあるような。
「大将、隠し事多いからなあ。
まだまだ隠してることが腐るほどあるんだろう」
「お腹の中、真っ黒けっけだもんな」
へらへらと笑いながら足をぶらぶらと揺らす不動。
それに対して薬研はギクッとした表情を浮かべ、
止めろというように手をひらひらと払った。
「あー、よせよせ。
本丸で大将の悪いこと言うと締められるぞ」
「はぁ? 主なら執務室籠りっきりだろぉ? 平気だろ」
その時、不動の背後の床がキシリと音を立てた。
辺りにぶわっと広がる濃い霊気に二人は肩をビクつかせた。
「誰が“お腹の中真っ黒けっけ”だって?」
「すみませんでした」
「謝んの早っ……。だから言っただろ」
「まあ、否定しないけどな」
「大将も否定しないのかよ!」
あはは、と笑う折。
すると、折は手にぶら提げた袋から桜餅を取り出した。
「大将、これどうしたんだよ」
「厨で歌仙に貰ってきた。
神気で誰が何処にいるかある程度分かるから、持ってきた」
折は二人にそれを渡すと、薬研の隣に腰を下ろした。
「ほんと人間離れしてんな」
「俺も思う」
(甘酒のおかわりは?)
(あ、いる!)
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作者名：久遠深ヶ | 作成日時：2017年1月15日 17時
