なんででしょう？【青葉城西】3巻

92話目 ページ30

「なぁ、なんでマネやってんの」

さっきほどまで小人さんで笑ってた人とは思えないくらいの声で訊いてくる及川さん。

「別に、特に理由はないですよ。
しいて言うなら京谷がやれって言ったからです」

すまん京谷。
今だけは犠牲になってくれ。

「狂犬ちゃんと仲いいの」

「同じクラスの隣の席でよく一緒にお昼食べたり、班くんだり、カラオケ行ったり、一緒に帰ったりするだけです。仲いいわけじゃないです。」

「それを世間では仲良しっていうんだよ。
なんであんなことしたの」

及川さんの言う「あんなこと」とは体育館倉庫であった事件のことを言うのだろう。

あの件で岩泉先輩とも疎遠になってしまった。

許すまじ傘村。

「信じてもらえないと思うので言う価値ないです。」

「なに。」

「あれ、私がやったわけじゃないんですよ。」

「は？！」

「そうなると思いました。
そうせ信じないんですから言っても無駄でしたね。すみません。」

皮肉を混ぜた言い方をしてまた黙々とスイカを切り始める。

「それ、本当なら誰がやったっていうの」

意外にも食いついてきた。
ここからの言葉選びは慎重に。決して誘導だと気づかれないように傘村までたどり着かせる。

「誰だと思いますか？」


「柚葉ちゃん？」

即答。あれ、これもしかして

「あの子、そういうこと平気でするもんね」

そういうパターン？

「そうなんですか？」

「前もあったんだよ。おんなじこと。バレーボール全部穴あいてるーって。

当時は傘村ちゃんだけじゃなくてほかのマネの子もいてさ。
結局のところそのマネの子がやったことになって、その子停学。

傘村がやったってわかったころにはもう転校しちゃってて。

傘村はそんなこと知らなーいみたいな感じで余裕でマネやってて。
中学の頃の話だけどね。」

「おんなじこと？」

「及川さんそれ、カマかけだったら許しませんよ？」

「はは、そんなわけないじゃん。
カマかけだったらこんなに仲良くスイカ切らねぇよ」




中学の頃に失態とかさすがに墓穴すぎるでしょ。

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