なんででしょう？【青葉城西】3巻

76話目 ページ13

説明し終えると先輩は俺のことを見上げていた。
場に似つかわしくない「かわいいな」という思考で埋め尽くされた脳内は使い物にならず、ただただ「なんだこのかわいい生き物」とひたすら考えていた。

「私のこと、引き留めるためのウソ？」

「違います」

引き留めるため、というのは半分あっているかもしれないが嘘では断じてない。
即答した俺に対して先輩は不安そうに見つめてくる。

本当にかわいいな。

じゃなくてちゃんと誤解を解かないといけない。
この場を逃したら先輩のことだ、俺をことごとく避け続けるだろう。

「ほんとの、話です」

幼い子供をあやすような口調になったが位漫歩先輩には効果的なのではないだろうか。

「ほんとに？」

なんども「本当に？」。
そういって確認してくる先輩に対して精一杯の笑顔で「本当です」と答える。

「信じるよ？」

そういった先輩の目はまだどこか不安げで俺の顔色を窺っていた。

「信じてください」

先輩にそう伝えるとまだ不安は残っていそうだが笑顔で返してくれた。

「わかった」

その言葉が何よりうれしかった。

危なかった。
嫌われるところだった。傘村にだいなしにされるところだった。

俺は心の中で傘村をブラックリストに登録した。

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