風になって消えたい【国見英】

７【噂】 ページ32

−−ねぇ、知ってる？ あのマンションの……

−−あー、あれでしょ、飛び降りっていう

−−そうそう、それウチらと同い年の子らしいねー

−−それヤバくなーい？



　翌日。

　盗み聞きするつもりもない会話が、鮮明に耳に入ってくる。


　こんなことがあるから、午前も授業を受ける気になれないのだ。だが、あいつのように１日中 外で過ごす気もない。

　机に伏せて、休み時間を過ごす。



(午後……またサボるか)



　昨日は部活がオフだったから、早く帰れたし、早く寝れた。

　なのに、なんだこの倦怠感……。


　ふあ、と欠伸をして、目をこすって。重い瞼を持ち上げる。

　視界には、俺の腕を覆うワイシャツと、机と、後は嫌になる程青い空。

　隣の席に、あいつの姿はない。いつも通り。



−−しかもその子、青城生って噂なんだよね

−−うわ、何かあったの？

−−知らなーい。いじめとかそんな話も聞かないし



　俺の席のすぐそばで、女子が会話を進める。

　何も考える気になれず、ぼんやりとその会話を聞いていた。

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