風になって消えたい【国見英】

４【タンポポ】 ページ17

翌日の午後の授業も、俺は中庭へ行っていた。

　なぜかって問われれば、なぜだろうってなるけど。


　多分、期待してたんだと思う。Aがいることを。



「あ、くにみー」



　中庭に一歩入れば、案の定。
　今日はちゃんと起きてて。

　必死に何かを噛んでいるが、俺のことには気づいたらしく、手を挙げながらこちらを向いている。



「今日も来たんだー、悪いヤツっ！」



　口の中を空にしたAは、笑いながら俺の席をつくる。

　いや、悪いヤツって。



「お前も」


「あたしはいーの。もう見放されてるから」


「は？」



　Aは脚を放り投げながら、呆れたような口調で言う。

　その言葉は、どうにも引っ掛かって。
　聞き返さざるを得なかった。



「いや、だってそうじゃん？ 授業出なくても なーんも言われないし、親もあたしのことなんか興味ないみたいだし」



　乱暴に言い放たれた言葉。

　結構意味深な発言ぽいのに、当の本人はお気楽そうで。


　そういえば、昨日もそんな感じな話を聞いた気がする。



「結局さ、人間ってのは信頼が大事だよね、シンライが。
くにみ君は、他人から信頼される人になってねー」



　最後はふんっと鼻を膨らませて、自己完結。

　俺はそのトークに気圧されて、なんも言えず。



「はあ」



　浅くため息をついた。

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