風になって消えたい【国見英】

Prologue【昔からの話】 ページ1

　 昔から、そんな感じだったのかもしれない。


　自分には、落ち着けるところとか、居場所とか、全然なかったのに。

　一度眠るための場所は、沢山あった。


　眠ってしまえば、抉られた傷も癒やされて。
　目が覚めれば、傷は浅くなっていて。

　……自分にとっての眠りは、お風呂に入るようなものみたいだ、昔から。


　元々ナーバスではなかったし、寧ろ図太いと言われるような人間だった。

　自分自身その事を誇りに思ってるし、長所だとも思ってる。……大袈裟かな。


　でもまあ、悪い空気をそのままにしたいとも思わないし、良いとも思わないから。
　昔から、悪かったムードを良くする、というのが仕事だった。

　なるべくフランクに、でも相手を傷つけないように。って、何繊細な事を云っているんだろう。

　でもそれが自分にとっての天職だと思ってしまえば、全然難しい話ではないし、自分からムードを悪くする事もなくなっていく。


　逃げるんじゃない、なんて良く言われるけど、逃げているつもりも逃げるつもりもない。

　ただ、平穏に暮らしたいだけなんだ。

１【サボり魔】→

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