花嫁修業52日目 ページ16
・
「……………………………」
『…まふ、』
「ま、ふ…くん」
無言のまま虚ろな表情で俺たちを見ている、その瞳には俺達は写っているのだろうか。もっと遠くを見ている、何も見えてないのか?
いつも、まふは目隠しをしていた。子供の頃から…それは今でも変わっていない。
俺はゆっくりと立ち上がりまふに触れようと手を伸ばす。
『…まふ』
「っ!…」
パンッ
小さな音だった、手のひらが痛くなった。
その方向に目を向けると真っ赤に染まっていた。思わず目を見開くが、まふの方を見るのが先だった。まふは、震えていた。
『っ…まふ、どうしたんだ』
「…来るな………近づくな、」
「ま、ふくん」
「………………………近づかないで、来ないで、殴らないで…僕は悪くない、人を殺してなんて……ないんだ、違うんだ。…僕は悪くない、悪くない!!僕は、僕は、僕は、僕は!!!」
『まふっ!!』
抱きしめる、まふは泣きながら俺の事を殴った。胸が痛い、鈍器で殴られたように痛みが走る。…骨は、折れたかもしれない。
抱きしめるのをやめないからかまふは抵抗するのをやめ、本格的に泣き出した。ぽろぽろと零れる涙が痛々しい。
あの世とこの世の違い、それは、心の底から泣くことはほとんど無いことだ。
痛みや辛さから泣くことはあるが、心から泣いてしまうものは珍しく、ほとんど居ない。
俺や、浦島坂田船の皆はその類だ。まふや、天月、luzやnqrseはまだ泣く方に近い。
今のまふは過去のトラウマに怖がり、辛くて泣いているように感じ取れる。
『…』
まふを辛い過去から解き放してやることは出来ない、俺は…人間の医者で妖専門ではない。そして、本人が望んだ人だけが、治すことが出来る。
『…ごめん、まふ…何も出来なくて、ごめん』
「離せ……離して、」
まふが俺の腕から抜け出そうとした、俺はAに当たってしまうと思い力強く止めようとしたが、その必要は無かった。何故なら、まふが自分から止まったからだ。
何が起こったのか分からずまふを見つめていると再び、瞳から雫が零れ落ちた。
しかし、先程の苦しさの涙とは違うように感じ取れた。
「…………………………A?」
『!』
「……ぁ…ぅ……あ゛……あぁ、」
震える手でAの頬を触り始めるまふ、俺は触れさせて大丈夫なのかと思い止めようとしたが天月が首を横に振ったので辞めた。
「……A、A……おきて、おね、がい…ごめん、ぼく、…」
まふの目は元に戻っていた。
517人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年5月19日 19時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あや - 始めまして!この小説すごい好きです! まふまふさん推しなので得に! 受験お疲れ様です 更新頑張ってください! (2020年4月3日 0時) (レス) id: a7aad2115f (このIDを非表示/違反報告)
胡桃きら - 推しを愛で隊(夜桜)さん» お返事ありがとうございます。受験だったのですね、お疲れ様です!そしてほんとにすみません、、何回も読み返していてこれまで占ツクで読んだの中でトップ3の中に入るぐらいだいすきな作品です!これからも応援しています、作者様のペースで更新頑張られてください。 (2020年3月29日 21時) (レス) id: 5346f0bcd8 (このIDを非表示/違反報告)
推しを愛で隊(夜桜)(プロフ) - 胡桃きらさん» 初めまして、そんな有難い言葉を頂いて本当に嬉しい限りです…!!受験も終わりましたので、更新を少しずつ再開しようと思っています。我儘なんかじゃありません!!わざわざコメントして頂けるなんて驚きましたが…w更新は再開します。絶対なのでご安心して下さい!! (2020年3月7日 14時) (レス) id: e44c1f3d42 (このIDを非表示/違反報告)
推しを愛で隊(夜桜)(プロフ) - あいろさん» あ、ありがとうございます!!! (2020年3月7日 13時) (レス) id: e44c1f3d42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜桜 | 作成日時:2019年4月9日 0時