99話 ページ3
ミルクside
『たいした才能もない癖に宮廷パティシエとか調子に乗ってるとしか思えないわ』
『ハニー様に媚びを売ってあそこまで上り詰めたに違いないわ』
そんな囁き声が聞こえてくる。この夢を見るのは何度目だろう?初めて宮廷パティシエになれたときとても嬉しかった。憧れのハニー様と一緒の立場になれたのだから。でも……
『宮廷パティシエの恥!』
それを言われたとき、心の中で信じていた何かが崩れ落ちた。だから、私は人間界にやってきた。最初は女王は納得していなかったけど最後の方は王子が女王を説得されて人間界に行くことを許可した。
そして始まるのはパートナー探しだ。ハニー様は私が来る数ヶ月前からここにおり、既にパートナーを見つけていた。
しかも、ハニー様とよく似たとても腕の高いパティシエールをパートナーにしていて凄かった。だから私もそれ相応の相手を見つけないと、と思った。でも、見つからなかった。私がパートナーにしたい、と思う相手はみんなパートナーが付いており、どうすることも出来なかった。
「(帰るのはないわよなぁ…王子に合わせる顔がないし)」
どうしようか、と悩んでいると、誰かが入ってきた。その子はフルーツタルトを作っていた。とても楽しそうに。
「よし!出来た!」
そう言ったあの子はとても清々しい笑顔をし、フルーツタルトをケーキ箱に入れた。
「(どこに持っていくの……?)」
気づけば私はその子のことを観察していた。腕前はまだまだだった。でも、何故か気になってしまった。何故なのだろう?
別にハニー様のパートナーみたいに腕の良いパティシエールという訳でもない。なのに何で…
「(こんなに気になっているの?)」
自問自答しても答えは見つからず、とりあえず彼女の行方を追った。
「(ハニー様⁉ってこっちに来る…⁉)」
私はポカンとしていると、ハニー様は私の隣に座りこう言った。
「ミルク。もしかしてあの子をパートナーにするつもりですか?」
「い、いえ…まだ決めた訳では…」
「そう。でも、貴方とあの子似たもの同士だからお似合いだと思うけどね」
「えっ。それはどういう……」
意味ですか、とハニー様に聞こうとしたときハニー様は『あ、麻里とあの子の話が終わったみたいだから私はもう行くわね』と言って去っていってしまった。
「(は、ハニー様…?)」
私は違和感を覚えながらも、あの子の後を追った。
140人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時