幻想小噺

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これまでと同じように
わたくしは癒術を使いました。
キラキラ光る夢を取り出すと
美しく幻想的な景色が浮かび上がる。
彼の持っていた景色は、
2019年に人々が沢山の笑顔を咲かせる姿。
貴方の夢は素敵ですね、そう言って
そっと前足に触れると
光がココロへ還っていく。
それが消えると同時に、
わたくしの掌の上で梅の花が咲きました。
芯の強さを感じる確かな朱、表しているのは

｢明るく前向きな気持ち、ですね｣


さあ、貴方の瓶詰めを創りましょう。


いつも通りの瓶詰めの材料を取り出してきて、
魔法の人形に想いのカケラを手渡す。
今回は子猪が彼の元へ行きたがりました。
想いのカケラは眩い光を発し、次の瞬間には、
どこか新年への希望を感じさせる
素敵な絵馬に生まれ変わる。
人形の猪は嬉しそうな様子で、
絵馬に頬擦りをしていました。
……なんだかココロが温まりますね。

｢さあ出来ましたよ、貴方の瓶詰めです｣

わたくしが瓶を手渡すと、
お客様は前足でガラスを撫でた。
人形の猪は楽しそうに瓶の中を走る。
お客様は優しげな目を向けていました。

｢あなたはとても優しい人です。
人々を一番に考えられる、
ココロのあたたかい方が……
わたくしは世界に必要だと思いますよ。
十二支の中で劣るなんて、とんでもない。
今年という大切な今この時を、
その貴方様の力で12年に1度しかない
優しい年にしてくださいませ｣

わたくしが微笑むと
お客様もにっこり笑いました。
それは店に入ってきた時とは全く違う、
幸福で満ち足りた表情です。

｢店主さん、本当にありがとう。
人を優しさで包める、
貴方のような良い人に出会えて幸せだよ｣







わたくしはこれを聞いて、
お客様がお帰りになられた後
最低な独り言を言いました。


｢良い人……ですか。｣


バカバカしい。

また店主からの伝言→←6瓶目 12分の1

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