23瓶目 沈没船 ページ34
こうして小説に没頭している時、
僕はたまに記憶の海で泳ぐ。
広い海の中には色とりどりの思い出の魚や、
ユラユラ揺れる知識の海藻があって
そこに行くのが割と好きでもあった。
しかし、僕の海には欠点がある。
深い深い海の底、沈没船が横たわっているのだ。
それは小さくて、でも大きくて、
僕は何度も近寄ろうとしたけどダメだった。
沈没船……もとい、僕の幼い頃の記憶は
絶対に思い出せないあの日の事。
5歳の誕生日の夜に誰かが言った言葉が
どうしても鍵がかかって取り出せない。
何を言われたのか、誰に言われたのか。
僕は必死に考えたけど息苦しくなって、
とうとう水面に上がることを決めた。
いつもその繰り返しだ。
「ねえ、ソル。君は_______________」
サクっ、とペン先が原稿用紙に突き刺さる。
滲んでいくインクを止めようともせず
心の波に流されまいと抵抗した。
「僕は何のために生まれたのか」
そう書いた行にじわじわと黒が迫って、
徐々に蝕んでいく。
僕の頭の中も真っ黒だ。
助けて欲しいと思う反面、
僕を救ってくれる人なんていないと自虐する。
真っ黒なインクの海の中では、
笑っちゃうくらいどうしてか分からないけど、
僕のたった1人の兄さんがこちらを覗いていた。
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ワタクシ(プロフ) - レイさん» いつもお世話になっております……!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月11日 22時) (レス) id: cfda2d1e9e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 本当に綺麗な文章で感激しています!この作品大好きです!これからも応援しています!! (2020年4月20日 13時) (レス) id: a4e5c10c36 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - 関西人さん» 長いこと留守にしていましたが、貴方様のコメントで励まされました.......!素敵な言葉をありがとうございます。もう一度書きたいと思えました。これからも応援してくださる方のために書き続けますので、何卒よろしくお願い致します! (2019年10月12日 22時) (レス) id: d168fc46ca (このIDを非表示/違反報告)
関西人(プロフ) - 凄く綺麗な小説ですね!大好きです。もっと早くに知れば良かった... (2019年9月8日 16時) (レス) id: 35e35c5ca7 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - つばさ、別アカ2さん» 返信遅れて申し訳ありません、お褒めの言葉ありがとうございます!諸事情で「きみの瓶詰め」の方は停止中ですが、こちらをお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2019年2月24日 21時) (レス) id: 91d5b5e9ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ワタクシ x他1人 | 作成日時:2018年12月19日 20時