幻想小噺

17瓶目 情報屋ノア ページ26

「は？」

想像もしなかった条件に
思わず間抜けな声が出る。
驚くこちらをよそに、情報屋はニンマリ笑った。

「書いてあるとおりさ！
依頼を受ける代わりにここで働いてよ！」

その紙は店の従業員募集のチラシで、
時給は要相談、勤務時間も要相談、
条件は面白い人！と手描きで書いてある。
情報屋は無理やり手にチラシを握らせると

「君って面白いからさぁ〜？
僕的にも人手がいると楽しいしぃ？」

きゅるるん、と効果音がつきそうな程
瞳を潤ませこちらを見上げた。
こんな一依頼人を雇うという事に
なんのメリットがあるのかよく分からないが、
ここは大人しく従うしかなさそうだ。

「……わかった。ただし、依頼はしっかり頼む」

そう言うと今度は

「ほんと!?やったー！」

その場で跳ねて喜び始める。
こいつ、一々騒がしい奴だな……。

「じゃー今日から改めてよろしく！
あ、ちなみに僕の名前はノアね」

差し出された白い手を取り握手を交わす。
小さく華奢なそれには包帯が巻かれている。
私が包帯を見ているのに気付いたのか、
彼はさっと手を引っ込めてしまった。

「君の名前は？」

にっこり笑うノアに一瞬躊躇った後、
私は静かに自分の名を告げた。
色々な事があった作戦初日だったが、
これからは益々大変になりそうだ。

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