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14瓶目 温いコーヒー ページ23

暫くすると再びベルが鳴り、
ドアの閉まる音が聞こえてくる。
どうやら店主がこちらに帰ってくるようだ。
急いで名刺を同じ位置に置き直すついでに
机上に置かれたカップを取り中身を口に含む。
中身はオーソドックスな微糖のコーヒーだったが、
特に味わうことも無く嚥下する。

「いやぁ、大変お待たせ致しました」

その時丁度店主が現れ、向かいの椅子に腰かけた。
申し訳なさの欠片もなさそうな顔の彼に
いえ、とだけ短く返す。

「先程いらした方は知り合いでした……
あの娘も大きくなったものです」

そう言って彼は机の上に一つの透明な袋を置いた。
中には可愛らしい猫や星の形のクッキーが
丁寧にデコレーションされて入っている。

「貴方もきっと知っているはずです、
炎の向こうに夢を見た少女の話」

そう言うと店主は一瞬
うっとりとしたような瞳をドアの方にやり、
ふっとため息をついた。

流れるなんとも言えない生温い間。

数秒お互いが黙ったあと
店主が何も無かったようないつもの澄まし顔、
いつもの声でこう言った。

「お客様、もうこんな遅い時間ですよ。
また明日にでも話を致しましょう」

コーヒーも冷めたことですし。


少なくとも分かるのは、
店主の目が無言の圧をかけてきていることと、
カップの中のコーヒーは大して冷めていないことだ。

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ワタクシ(プロフ) - レイさん» いつもお世話になっております……!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月11日 22時) (レス) id: cfda2d1e9e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 本当に綺麗な文章で感激しています!この作品大好きです!これからも応援しています!! (2020年4月20日 13時) (レス) id: a4e5c10c36 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - 関西人さん» 長いこと留守にしていましたが、貴方様のコメントで励まされました.......!素敵な言葉をありがとうございます。もう一度書きたいと思えました。これからも応援してくださる方のために書き続けますので、何卒よろしくお願い致します! (2019年10月12日 22時) (レス) id: d168fc46ca (このIDを非表示/違反報告)
関西人(プロフ) - 凄く綺麗な小説ですね!大好きです。もっと早くに知れば良かった... (2019年9月8日 16時) (レス) id: 35e35c5ca7 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - つばさ、別アカ2さん» 返信遅れて申し訳ありません、お褒めの言葉ありがとうございます!諸事情で「きみの瓶詰め」の方は停止中ですが、こちらをお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2019年2月24日 21時) (レス) id: 91d5b5e9ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ワタクシ x他1人 | 作成日時:2018年12月19日 20時

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