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10瓶目 掌の上 ページ17

あは。
これだからわたくし、
嘘つきは嫌なんですよ。
またソルの奴は下らない嘘をついて……。
昔からそうでした。
本当に嘘ばかりつく憎らしい子供で、
何をしても許されて可愛がられて、
わたくしは、わたくしは……ッ。

──彼がきつく唇を噛んだその時、
また来訪のベルが店に響き渡る。
はっと我に返った様な顔をした店主の瞳は、
また普段通り掴み所のない澄み方をしていた。
少し失礼致しますね、
そう言って彼はまた玄関へ消えていく。

その足音を聞きながら、
まだ店の営業時間内だった事を思い出した。
……それにしても、店主とその弟の間には
何か酷く拗れたものがあるらしい。
机上に置き去りにされた名刺を手に取る。
洒落た金文字はどことなく、
形作った言葉の意味から威圧を感じてしまう。
こちらだって子供じゃないんだから、
英語くらい分かる。
"pierrot"、その文字を指でなぞりながら
危険な好奇心を必死で抑え込む。
いくら優しい店主だとしても、
プライベートに踏み込んで
名刺の意味を聞くのは憚られた。

……さて、どうしてくれようか。

抑えきれない悪どい笑みを誤魔化すように、
名刺の角を爪で軽く弾く。
店主の突然の動揺と、
先程までなかった名刺の端の焦げ跡。
連続して起こったこの現象は
「偶然」なんて陳腐な言葉で片付けられない。
彼から聞いた逸話では、
道化師は迸る業火で全てを焼き尽くしたとか。
……火と動揺と道化師、そして店主。
物語の幕がもうじき上がるのを感じる。
全てはこの自分の思惑通り、
哀れな道化師にはもう少し
掌の上で踊ってもらおうじゃあないか。

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ワタクシ(プロフ) - レイさん» いつもお世話になっております……!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月11日 22時) (レス) id: cfda2d1e9e (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 本当に綺麗な文章で感激しています!この作品大好きです!これからも応援しています!! (2020年4月20日 13時) (レス) id: a4e5c10c36 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - 関西人さん» 長いこと留守にしていましたが、貴方様のコメントで励まされました.......!素敵な言葉をありがとうございます。もう一度書きたいと思えました。これからも応援してくださる方のために書き続けますので、何卒よろしくお願い致します! (2019年10月12日 22時) (レス) id: d168fc46ca (このIDを非表示/違反報告)
関西人(プロフ) - 凄く綺麗な小説ですね!大好きです。もっと早くに知れば良かった... (2019年9月8日 16時) (レス) id: 35e35c5ca7 (このIDを非表示/違反報告)
ワタクシ(プロフ) - つばさ、別アカ2さん» 返信遅れて申し訳ありません、お褒めの言葉ありがとうございます!諸事情で「きみの瓶詰め」の方は停止中ですが、こちらをお楽しみ頂ければ嬉しいです。 (2019年2月24日 21時) (レス) id: 91d5b5e9ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ワタクシ x他1人 | 作成日時:2018年12月19日 20時

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