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肆拾肆話 ページ6







「…おい」




杉野くんの一言でそっちを見ると皆、どこか一点を見つめている。

私もそちらを見ると水の中から気泡が浮き出ていた。
そのまま見つめて数秒、次の瞬間に私たちが見たのはせんせいの顔が入った透明とオレンジの変な球体。





「これぞ先生の奥の手中の奥の手、完全防御形態!!」





その言葉に思わず表情が固まる。
何あれズルくない???そんなのほぼ無敵状態ってこと??

それから少し自慢げなせんせいの説明を聞くこと数分。
どうやらあの球体は24時間ぐらいで自然崩壊するらしい。裏を返せばそれが崩壊するまでの24時間、せんせいは全く身動きが取れないことになる。





「これは様々なリスクを伴います。
最も恐れるのはその間に高速ロケットに詰め込まれ、はるか遠くの宇宙空間に捨てられる事ですが…その点はぬかりなく調べ済みです。24時間以内にそれが可能なロケットは今世界にどこにもない」





……しょうがない、か。
せんせいの隠し技、それにその欠点までちゃんと計算した状態だとこんなの完敗以外の言葉は私たちに似合わない。





「チッ、何が無敵だよ。何とかすりゃ壊せんだろこんなモン」





寺坂くんが片手にスパナを持ってせんせい、基…その透明の壁をガンガンと叩きまくる。





「ヌルフフフ、無駄ですねぇ。核爆弾でもキズひとつもつきませんよ」





一方でせんせいは余裕そうな表情。
ほら、その証拠に口笛まで吹いてる。…うっわー、ムカつく。





「そっか〜、弱点無いんじゃ打つ手ないね」

「にゅやーッ!」





あろうことか動けないことを利用して例の恥ずべき姿を見せ始めた赤羽くん。





「やめてーッ、手が無いから顔も覆えないんです!!」

「ごめんごめん、とりあえず至近距離で固定してと…」

「全く聞いてない!!」





……漫才か何かを見させられてるみたい。

せんせい、核爆弾でもキズひとつもつかないって言ってたよね?なら……。





「にゅやッ!?石川さん、それやめて!!」

「えへっ、ついつい」





糸を通した針を操って秒速でそれを突く。
カンっ、とどこか甲高い音が鳴ったけどせんせい以外にはバレてないみたいだった。





「そこで拾ったウミウシもひっ付けとくね」

「ふんにゅああああッ」

「あと誰か不潔なオッサン見つけて来てー。
これ、パンツの中にはねじ込むから」





……ここまで来れば悪魔以外に言いようがないんだよなぁ。

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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時

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