伍拾漆話 ページ21
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「…大した奴だ、少年戦士よ。敗けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ」
「え、何言ってんの?楽しいのこれからじゃん」
前言撤回、あんまり変わってない。
わさびとからしを持って、悪魔のように笑う赤羽くんを見てそう直感する。
「…なんだぬ、それは?」
「わさび&からし。おじさんぬの鼻の穴にねじ込むの」
「なにぬ!?」
「さっきまではきっちり警戒してたけどこんだけ拘束したら警戒もクソもないよね」
可哀想に、あの人。
赤羽くんじゃなくて他の人が相手なら拘束で終わってたはずなのに。赤羽くんを選んだのが運の尽きってやつだね。
苦笑いしながら悲惨な状態になったあの人を見つめる。
「さぁ、おじさんぬ。今こそプロの意地を見せる時だよ」
にっこりといい笑顔であの人の鼻にわさびをねじ込んだ赤羽くん。
思わず口元を押さえて視線を逸らした。
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騒々しい音、馬鹿っぽい人。それが印象。
「ホラ、渚君!!男でしょ!!ちゃんと前に立って守らないと!!」
「無理…前に立つとか絶対無理」
「……がんばって」
「石川さんまで!」
こういう所は男にはチェックが厳しくなるから女子だけで行かなきゃならない所に女装で入ってくれるのは助かる。
……潮田くんはグレーゾーンだって勝手に思ってるんだけどね。
「ね、どっから来たの君ら?
そっちで俺と酒飲まねー?金あるから何でもおごってやンよ」
どこにでもいるよね、こういう人。
「はい、渚。相手しといて!!」
「え、ええ?」
困惑気味な潮田くんを横目に苦笑いで手を振ってその場を後にした。
潮田くんが居ない状態。つまりは本当に男手が借りることが出来ない。
なるべく離れるのは避けたいところだねぇ。そんなことを思っていると見慣れた黒服が近付いてきた。
持っている紙をこっそり、後ろ手で受け取ってそれをポケットに入れた。
そして不意に辺りを見渡すと、
「え……」
ふわふわ揺れる金色の髪。澄んだ青い瞳。
愛くるしいその姿はよく、知っている人で。
「えりす、嬢……?」
「カタカナ!」
ぎゅぅっと、抱きついてきたエリス嬢。
無断で抜け出してきたのか後ろに黒服たちは居ない。というか、首領がこんな所にエリス嬢を1人にするはずがない。
「どうしてここに、」
「カタカナに会いたかったからよ!」
それは嬉しいんですけど……はぐれたっぽいね、私も。
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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時