伍拾弍話 ページ16
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「交渉決裂、ボスに報告するとするか」
お、ばーか、さん。
今方向転換して、退路に歩こうとするのはあまりにも遅すぎる。
だってそうじゃん、その前に私たちが全部の退路を塞ぐなんてことふつーなら考えつくでしょ?
「おまえは…我々を見た瞬間に攻撃せずに報告に帰るべきだったな」
痙攣だけ、かな。
フラフラしたままの状態で交戦するのはあんまりオススメできないんだけど。
気を失われても統制が取れなくなる、非があるのはこっち。……私が、殺る?
「烏間先生、大丈夫かい?」
太宰さんが、烏間せんせいの後ろで気遣う様子が確認できた。
……太宰さん、体術はマフィアの中堅以下ですよね。しかも間合いも測定していない相手にどうやって、
「麻酔ガスを吸った人間に戦わせる程、腐ってはいないさ」
そう言って太宰さんは烏間せんせいを押し退け、ついには自分が前に出た。
ニコニコ笑ってるし何か策があるのか、なんて思っているとクルリと途端にこちらを向いて微笑んできた。
やっぱ、そーなりますよね。しょうがない、ここは物事を円滑に進めるために異能力を使うより他は無さそうだしね。
相手が麻酔ガスの入った物を出す前、即効性の毒…といっても一応気絶レベルの針を見えない速さで飛ばして首筋に刺した。
後は太宰さんが何とかしてくれるはず。
カモフラージュで動くなり、攻撃を避けるなり、なんなりね。
「烏間先生!!」
やっぱり避けておいてよかった。
烏間せんせいでも勝てたんだろうけど、元に戻る状態まで何もしない方が得策だろうし。
「…ダメだ、普通の歩くフリをするので精一杯だ。戦闘ができる状態まで30分で戻るかどうか」
支えられないと歩けないぐらい。
足もガクガクしてるし、……というか象すら気絶するのに烏間せんせいは気絶しないんだ。
「心配には及ばないとも、私もついているからねぇ」
「……人に頼っておいてそれ言います?」
いつのまにか左隣にいた太宰さんを横目で見てそう言う。
不意に、耳に何かが触れた。
「っ、…………訴えますよ」
「うふふ、珍しいものをしていると思って」
「保険ですよ、保険」
烏間せんせいも太宰さんも、私も。
皆が危なくなった状態の時のための保険。
「つまりは毒かい?」
「あははっ、さぁ?
もしかしたら銃弾かもしれませんよ」
「其れは佳いね、中也に当てに行こうか」
相変わらずその思考だけはブレないな、太宰さん。
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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時