検索窓
今日:4 hit、昨日:17 hit、合計:48,362 hit

番外編 ページ14







『羊』に群れられたら。





帽子の場合。



羊…ひつじ。え、いや、ひつ、じ??
フワフワフワフワ、あの子の髪色よりももっと赤味の強い茶色髪はどことなくフワフワしていて思わず見つめてしまう少女。
「手前があのクソ太宰が云ッてた奴か」
「……たぶん、そう」
実はあの人(?)にも名前があったのだ。人間の姿用の名前が。
「あ、」
「あ?」
「羊のお兄さん、だからなんだっけ名前…蛞蝓?」
「潰すぞ手前」
そう言われると共に頭を掴まれるその光景は小動物の戯れ…こほん。
「……彼奴に誘われて此処に来る奴、手前ぐらいだぞ」
「行く場所が無かったから、…だったらどこへでも行けるでしょ?」
悲しそうに笑うその顔がやけに焼き付く。
ちっ、と何かにイラついたような舌打ちをして羊の彼は少女の頭に手を乗せた。


「逃げ出したくなッたら逃げればいい、俺は止めねェからな」





最近になって来た普通の人間。首領に聞くとどうやらクソ太宰が連れてきたらしい。
半妖の住処(此処)に人間を連れて来るとか、頭ン中どうなッてンだ。
……そういえば、首領から一応顔だけは合わせとけって云われてたな。そう思い、ぼーっと死んだ目をした其奴の前に立った。
「手前がクソ太宰が云ッてた奴か」
「……たぶん、そう」
抑揚がねェな、此奴の声。こんなのただの操り人形みてぇだ。……青鯖、どういう目的で此奴を此処に連れて来たんだよ。
「あ、」
「あ?」
何かに気づいたのか其奴は俺の頭上辺りをみながらそう呟く。
何ともなさそうな顔をして臆することなく、俺と目を合わせた。
「羊のお兄さん、だからなんだっけ名前…蛞蝓?」
「潰すぞ手前」
思わず頭を鷲掴みにして気づく。
……やけに頭が小さい。否、人間の子どもってこんなモンなのか?
だから嫌なんだよ、接し方も扱い方も分かんねぇ奴と関わるの。俺はクソ太宰のニコニコしたご機嫌取りみてぇなことするのだけは御免だ。
「……彼奴に誘われて此処に来る奴、手前ぐらいだぞ」
あくまで追い出すつもりだった。こんなとこに居ても結局のところ、命の保証はできねぇ。だったら追い出すべきだと少なくとも俺は思っていた。
「行く場所が無かったから、…だったらどこへでも行けるでしょ?」
云ってることは眩しい筈だ、でも手前のその表情は違ぇ。それなりの幸せも何も貰えなかった奴の顔だ。
ムカつくな。舌打ちをして目の前の其奴の頭に手を乗せた。


「逃げ出したくなッたら逃げればいい、俺は止めねェからな」



俺なりの歓迎の言葉。

伍拾壱話→←伍拾話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
332人がお気に入り
設定タグ:文スト , 暗殺教室
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。