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続き8 ページ33

「だからあなたの事、占ってあげる。勿論旅にあれこれ言うのは野暮だから、タダで」

 先程Aが言った言葉をなぞるように言い、ニッコリと美和子は微笑むと、じゃあお願いしますとAが言う。


「ええ。‥‥じゃあ手を出して」


 美和子の言葉に、片手を出したAの手を美和子はじっと見る。


「ああ‥‥Aちゃん、あなた物が壊れる運勢よ。最近何かAちゃんの身近で壊れたものとかなぁい?」


『嗚呼‥‥‥‥なるほど、ありますよ玄関扉とか(疲れた目)』


 Aが言うと美和子はAの目から察して、貴方苦労してるのね……と寄り添うような声をかけた。


「……嗚呼でもあなた、それだけじゃないわ。恋愛の運勢もあがってる。あなた、近々運命の人と何かあるわ」

『へぇ』


「あ、Aちゃん信じてないわね〜!でも本当にあなたと運命の赤い糸で結ばれてる人と何かあるわよ」


 そうですか、とAは言う。その目はどこか冷静に澄んでいた。でも、と告げる。


『でもなら尚更、会いたくないですねぇ運命の人とは』

「え…、あらどうして?」


 運命の人なんて普通は出会いたい筈だ。少なくとも自分が見てきた中では。

 美和子は驚いてAをみる。Aが静かに告げる。

チャプンと、Aが手を湯船から出す音が聞こえる。


『例え、その人をどんなに好きになってしまっても、私はその人に思いを告げることは出来ない。私には数年後の未来は予定にない‥か、ら、ね‥‥‥』


 言うとAはボッチャァアンと湯船に倒れる。

Aちゃん!と慌てて美和子がAを救い、見るとAの顔は真っ赤だった。


「のぼせ、たのね‥‥」


 確かに風呂に入ってからそれなりに時間は経っている。私もそろそろ上がろうかしら、と美和子はAをお姫様抱っこし、湯船からあがる。


ーーーー例えどんなにその人を好きになったとしても、私はその人に思いを告げることは出来ない。


 なんて悲しいことを言うんだろうと思った。

Aの恋は失恋することも思いが成熟することもなく、ただ散らすこととなる。


嗚呼、と美和子は思う。

どうか優しいこの子に幸せな未来をあげてください、と。

自分を気持ち悪がることなく接してくれたこの子に温かい幸せを。


 澄んだ目をした綺麗な友だちの幸せを、美和子は願った。

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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます!これからも頑張ります! (2021年5月2日 7時) (レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです!!もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています!!これからも頑張って下さい!! (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。(ありがとうございます!)なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、? (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、(←亀更新人間)こちらこそ、よろしくお願いします! (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時:2020年11月13日 0時

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