漏れ出る本音。記憶がない方が良い時もあるから。 ページ21
手の隙間から蒼白い月の光が溢れる。炭次郎はほぉ、と息をつく。今夜の月は綺麗だ。
その時、どこからか声が聞こえ炭次郎は片手の手を刀におき、辺りを見渡した。
鬼か人か。どちらにしても夜は気を引き締められる。だが辺を見渡した炭次郎の目には鬼ではない人らが映った。
「あれは………」
蛇柱__伊黒小芭内と、記憶喪失のAである。見えたのは、屋根の上で伊黒さんがAさんを抱きしめている姿。
「お二人共恋仲……なのかな?」
確か、宇髄さん。Aさんと中が良かったから、今度聞いてみよう。
*
蝶屋敷の裏庭の乾いた地面で、お隣は蹲っている。蹲ったお隣にギンギンと暑い、日光の光が照らされる。
___お隣さん。
目を大きく見開く。唇は震え、何かに耐えるように歯を噛み、両腕を強く抱き締める。
Aちゃんが記憶を失ってから、何度も何度も、笑顔で笑うAちゃんの声が頭によぎる。
「Aちゃぁん””っ………Aちゃん………」
『_____呼びましたか、お隣さん』
いつの間にか隣にAちゃんが、傘を持って立っていた。不思議そうにこちらを見ている。
「A、ちゃん」
Aちゃんは傘を開くと私にかけてくれた。日が強いから後で肌を傷めないように、って。
私が傘を受け取ると、Aちゃんは私の隣に座って、横目で私を見て、言った。
『お隣さんは私に、記憶が戻って欲しいですか』
「うん…戻って、欲しいわぁ」
そうですか、まあ、そうですよね。と、Aちゃんが軽い口調で話す。私は、とAちゃんが呟く。
『…何故でしょうかね。私は、何故だが記憶が戻らないままでいいと思ってるんだ』
「えっ………」
なんで、と呟く。なんで、なんで?と。視界が虚ろになる。
『私も、記憶を戻そうとしてみたんですよ。でも、記憶を取り戻すのが何故か怖くて。どうしようもなく怖くて』
言葉を失った。
記憶を失う前のAちゃんは一度だって怖い、と言ったことはなかった。いつだって平気な顔で私を守ってくれていた。
でも違った。
いつもAちゃんは、耐えてた。
本当は怖くて堪らないことも耐えて、一人で私の前からも消えて、たった一人で。
今、今、Aちゃんが言った事こそが、Aちゃんの本音だ。
本当は、ずっと、怖かったんだ。Aちゃんは。
知らない誰かとした約束。→←優しさなんて本当は凄く簡単なものなんだ。
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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます!これからも頑張ります! (2021年5月2日 7時) (レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです!!もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています!!これからも頑張って下さい!! (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。(ありがとうございます!)なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、? (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、(←亀更新人間)こちらこそ、よろしくお願いします! (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時:2020年11月13日 0時