【銀魂】 吉原の遊女と鬼の話。

消えないもの ページ44

｢・・・愛してる、なんざ、吉原の女の常とう句だ。




その言葉が、遊女のものなら信じねェ。」









土方は一度眼を上に向けて。









「・・・・だが、




その言葉がAという一人の女の言葉なら、





俺ァ信じることにする。」









・・・・・信じる。









届かないと思っていた思い。







肩の痛みなどもう気にもならなくて。









いつかのように手を伸ばす。

温かな感触。


繋がれた手。









｢・・・・だが、俺には惚れた女がいた。



その事実は消えねェ。


消す気もねェ。









・・・・お前はそれでもいいのか？」









ぬしは鬼の副長。
わっちは遊女。




決して崩れぬ壁がある。









そんなこと、知っている。



じゃが、こうして今、手がつながっている。


思いを伝えあっている。









わっちは、ぬしに惚れた女がいてもかまわぬ。

二番手も、甘んじて受け入れよう。









じゃが。









｢わっちも・・・消えぬ・・。


たくさんの・・・男に・・・・・汚された。









良いも悪い・・・も・・・・ない。









――――ぬしが・・・受け入れてくれるなら・・・。」









押し当てられた唇。
今までのどんな口付けよりもやさしくて。









触れているだけの感覚に、

自らの頭が白く染まる。









こんなことが、あるのじゃろうか。









こんな思い、叶ってもよいのじゃろうか。

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