【銀魂】 吉原の遊女と鬼の話。

意地悪 ページ22

土方の指先がわっちの頬をなぞる。

「女の泣き顔は嫌いなんだよ

とっとと涙拭きやがれ、」








涙をすいとる冷たい指。

首に巻かれたスカーフと対照的で。





泣くつもりは無かったと

言い訳する声は震える。






不快なはずの男の指なのに

土方の指は心地好いのがふしぎじゃった。








もう平気じゃと言って
はなしてもらった指。





心臓はなりつづける。








、





のう、土方







ぬしは知らぬのじゃろう





「土方．．．．．ぬしは存外意地がわるいのう。」







わっちが涙をこぼしてしまうとき全てに
ぬしが関わっていることを。





、




「ほんに.....意地悪でありんす」








出会いは最悪だった癖に
本当は優しくて、




冷たい瞳の奥は温かくて


赤いしるしをみても表情一つ変えなくて。





「.....ほんに...」







こんなに簡単に気持ちが揺らされていくなんて。







「．．．．やっぱ今日は間が悪いか。

また日を改める。


次はスカーフかえしてもらいに来らあ。」






こんな一言に浮き立つなんて。

また会えることが嬉しいなんて。





好きになっていない？


笑わせる。



もう全てが持っていかれた後ではないか。






嘘をつく限界。




許されない思い。

せめて去って行く背中に囁く。






遊女が決して言ってはいけない言葉を。









「ぬしが好きじゃ．．．．．．土方．｡」




握りしめた着物のすそが



悲鳴のような音を立ててきしんだ。

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