【銀魂】 吉原の遊女と鬼の話。

赤い花びら ページ20

かがみの前に移るわっちの姿。







代わり映えのしない、化粧で覆われた顔。




飾り立てられた髪の毛。







はだけた着物からのぞく肌には、









いくつもいくつも付けられた、






真っ赤なしるし。




今日の客は特にひどかった。





隠せないところにまでしるしを残していった。




ひんやりとする鏡。
自分の胸が移るところに手を当てる。








｢・・・・何で、わっちの体には、汚いものが増えていくんじゃろ？」







汚い、



くすんだ、



赤い花びら。









｢・・・土方に会う前じゃなかったことが救いじゃ」








見られたくなかった。
あの男にだけは。
おとといでなく、今日でよかった。









わっちが遊女ではなかったら、









そんな思いに、どんな名前を付けただろうか？









そんなことさえ、考えてはならぬ。






・・・わっちは、客以外の男に、








いや、客にさえも、





何の感情も持ってはならぬ。









・・・・鏡の前に映るのは
泣き笑いの女。









醜く歪んだ、男のおもちゃ。









「・・・・・・・わっちは、
いくつこの花びらを咲かせれば許されるのじゃ？」









洗い流せないしるし。







いくら擦っても、消えてくれない赤。









そして、


消えてくれない謎の感情。









「・・・・・・っう」









この涙と嗚咽とともに、









・・・・・ぜんぶ、ぜんぶ、消えてくれたら。









わっちはどれだけ救われるだろう。








この鏡に映る自分ごと無くなってしまっても、









誰も悲しまない。








だから、







｢・・・・・・消してくれ・・・・・っ
う・・・・・・








お願いだから・・・・・」









望んでも、








叶わない。








分かってる。









・・・・・・・・・分かってる。








死ぬまで、


わっちの大事な感情だけが、







消されていくことくらい。

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