一途にも程がある その5【時透無一郎】

182.手料理 ページ2

今日は私がご飯、無一郎が洗濯ということになった。



『ねぇ…。』

「なーに？」

『抱きつかれたら、ご飯作れないよ…。』



無一郎は、くっつき虫みたいにずーーっとくっついてくる。
腰を後ろからガッチリとホールドしていて、私が動くと一緒に動く…といった具合だ。



「Aの手料理初めてだから嬉しいの。
楽しみ。」



スリスリと、鼻先を頭にこすりつける。
くすぐったいし、照れくさい。



「怒らないで聞いてね。」

『え……分かった…。』



包丁でトントンと野菜を切りながら、頭の上から聞こえてくる無一郎の声に耳を傾ける。
私が怒ってしまうような内容かもしれないと、思わず身構える。



「今までね、色々な女の子の手料理食べてきたんだ。
でも、一番食べたかったのはAのだし、それが今日叶って幸せすぎる。
好きな子の手料理って、本当に嬉しいね。」



きゅうううう！



怒る理由が一つもない！！
ああ、もう！
ほんと、とんでもない無一郎だ！！



『っもう！
包丁危ないから離れて！』

「はーい。
……耳まで真っ赤だね。」



無一郎はクスクスと笑いながら、リビングに戻っていった。
今までの中で最速で野菜を切ることができました…。

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