LOVE BOX -北藤-

＊　ＢＡＤ…ＥＮＤ ページ17

ライトをつけると…バスタブに寄りかかる太輔を見つけた。

浴槽に張られたお湯は真っ赤に染まり、太輔の顔色は真っ白。

柔らかい唇は…真っ青になっていた。

「たい、すけ…」

体を引っ張って、抱きしめると…氷のように冷たい。

「太輔…起きろよ」

返事はない。

目を開けることもない。

「なんで…俺の気持ちを勝手に決めんだよ。俺がいつ…お前に傷つけられたんだよ。どれが、我儘な

んだよ…」

行かないでってカッター見せて脅したこと？

そんなの…。

「俺にとっては…可愛い我儘だったのに」

カッター見せるのは、寂しいからだって分かってた。

だから、素直にどこにも寄らずに真っ直ぐ帰ってきてたのに。

お前の機嫌を伺うためじゃない。

俺が一緒に居たかったから。

なんでこうなった？

寂しいなら、不安ならその気持ちが少しでも減らせるように指輪を用意したのに。

ポケットからケースを取り出して…太輔の指に嵌める。

「…ピッタリじゃん」

愛し合う時は、手を繋いで恋人繋ぎにして指を絡めて…。

だから、サイズは想像できた。

「これ…お揃いだぞ」

自分の指にも嵌める。

「太輔…お揃いのもの持つの、嬉しいって言ってたから、買ってきたぞ」

いつも、身につけられるように…視界に入るように。

「指輪…綺麗だろ。お前の好きなピンクだぞ」

自分の声だけが、バスルームに反響して返ってくる。

「夕飯…帰って食べるって、メールしたじゃん」

多分、そういうことじゃない。

俺が、メールで済ませたからだ。

太輔より、飲み会を取ったから。

「ごめん、太輔…っ」

残りの手紙には…。

『時間は戻せないからせめて…この先の未来の時間は、幸せを掴んで。

幸せになって』

あのな…。

「この先の未来にお前がいなきゃ…っ」

生きてる意味なんてない。

そばに落ちてるカッターを翳して…手首の血管に刺した。

抜くと、噴水のように血が出てくる。

固まらないように、俺も手を冷たくなった水に浸した。

「ごめんな、太輔…お前は、俺の幸せを願ってくれたけど、俺は…お前と一緒にいたい。すぐ、そっ

ちに行くよ…独りにしないから」

太輔を抱きしめて、目を閉じる。


ﾄﾞｸﾄﾞｸ…。


傷口から血が出ていく。

この体の中にある血液全部、出ろ。


早く…早く、死なせろ。


太輔が独りで泣いてんだよ。待ってんだよ。


怒られてもいい。


今度こそ間違えない。お前のそばにいる。


俺の意識も心臓もゆっくり暗闇の中に沈んで…止まった。

未来の為に…ハッピーエンド→←＊

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