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 さっき大樹くんは司くんの蹴りを手で防いでいたけど、防ぎきれていなかったみたいで彼の頭からは血が流れ出ていた。

 やっぱりさっきの蹴りの威力はすごい。もっと鍛えればいい遊び相手くらいにはなりそう。

「効いてやがったか」

「大樹くん……!」

 そっと大樹くんを地面に横たわらせる。

「出血がひでえ。何日か寝かしとくしかねえな」

 ……あぁ、そういうこと。

 千空くんがなにを考えているのかわかった気がする。

『しばらく大樹くんは動かさない方がいいよ。医療のないこの世界でこれ以上怪我が酷くなったら、最悪大樹くんが死んじゃう』

 大樹くんのことだから大丈夫だと思うけど、ここは千空くんに話を合わせておかないと。

「……うん、仲間割れはよそう。大樹、君は杠を守ってやれ。赤の他人の石像なんかよりも。俺も自分のやるべきこと(・・・・・・)をやる。邪魔はさせない」

 それだけ言うと司くんは去っていく。

「……クロスボウの時速200km超えてんだぞ」

「とってたね、バシって……」

「Aならまだしも……バケモンじゃねえか。無敵だろ、この時代じゃ。だから文明を進めるしかねえ。司を止める手はもうたった一つだ。銃、つまり――火薬を作る!!」

 千空くんはわたしの方を見た。

「A、テメーが司より強いのはもちろんわかってる。だがな――」

『大丈夫』

 わたしがもし千空くんたちの近くにいなかったら、誰も司くんを止めることはできない。

 それにさっきみたいに誰かを人質にとられたり、わたしの弱点を知られたりすれば、それだけで勝率はかなり下がる。

 千空くんや杠ちゃんは今のこの世界で自分の身を護ることがかなり難しい。いつでもわたしがみんなを護ってあげられるわけじゃない。

「クク、話が早くて助かる。おら、火薬作りの大冒険に出発だ」

 ゲシゲシと大樹くんを蹴る千空くん。

「えええ!? 大樹くん、何日か寝かせとくって……」

「司の手前な。あんなんで潰れるタマじゃねえだろ、起きろデカブツ!」

「ああ、もちろんだ!!」

 千空くんと大樹くんのこういうやり取りというか、関係性がわたしはすごく好き。

 まあ千空くんにはきっと「気色悪い」って言われちゃうだろうから心のうちに留めておくけど。

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作者名:桜庭 | 作成日時:2024年2月6日 17時

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