28.涙 ページ29
何が起こった。何故パイロは血まみれで倒れている？
Aは倒れているパイロを抱え意識を確認する
「っ…なんで、」
パイロは既に死んでいた。パイロは目が悪く曇っていたがそれでもあの瞳は綺麗だった。
Aは体を震わせパイロを抱きしめながら泣く
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
もう届くはずのないパイロに向かってAは謝り続けた
「A」
Aはゆっくりと前を向く
「クロロ…」
クロロの服は返り血で染まっていた。手には血の付いたナイフが握られている
「A俺はそいつの目を取りに来た。早くそこを退け」
「は？」
その言葉に耳を疑った
刹那今まで吹いていた強い風は止み静寂が訪れる
二人だけの世界にいるような感覚で周りの物も止まって見えた
「クロロが殺したの」
「あぁそうだ」
決して動揺を見せず俯き、パイロの目を閉じる。
優しく微笑み頬を撫でた
Aはパイロを抱き抱えながらゆっくりと立ち上がった
「クロロ…ごめん。パイロは渡せない」
月の光が強くなる。風はまた吹き始め炎が燃え盛る
「…」
クロロは黙ったままAの言葉に耳を傾けた
「パイロと約束したんだ。二人共絶対に助けるって」
「でもパイロは…」
Aの目からは抑えていた感情が溢れ出て涙が止まらない。それと比例するように月が赤くなっていく
「ねぇクロロ私はどうしたらいい？」
クロロの目を見て訴えるように問う
その瞳は何時もの金色ではなく今の月のような真っ赤な色になっていた
感情が高ぶると瞳の色が変わる。まるでクルタ族だ
だがクルタ族とは違うことが一つ
クルタ族の瞳は綺麗な緋色に染まるが、Aの瞳は血を連想させるような赤黒い色に染まっていた。綺麗とは程遠い濁った色
「Aその目はどうした」
クロロは違和感に気づきAに近づく
「私じゃ変えられない」
Aはポツポツと呟き始める
「何を変えられないんだ。言ってみろ！！」
「もっと強くならなきゃ…」
Aがそう言った瞬間パイロを花の上に寝かせ自分の腕を普通のナイフで切りつけた。Aの腕からは大量の血が溢れ出る
「おいっ！A！！」
クロロは焦っている。今のAは正気じゃない。完全に我を忘れている。
"
Aが唱えた瞬間流れ出していた血が槍状に変化する
「あれは…念！！！A！！」
"行け"
血の槍がクロロを攻撃し始めた
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作者名：てん | 作成日時：2021年8月28日 22時
