同志の思いを胸に【BANANA FISH】 (ページ7)

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20話鬼嫁ページ7

トラックがしばらく走り、ショーターのナンパも綺麗にスルーされて儚く終わった
トラックがやがてある一軒家の前で停まると、助手席から転げ落ちるように道端に出てゲーゲー吐きまくるマックス

途中、本当に気分が悪くなって運転を代わったアッシュとマックス。マックスのそんな変わりように「なんだあ？」と不思議そうに覗き込んでいる

「気分が悪いんだとさ」

アッシュが呆れて肩をすくめていると、「パパ!?」と幼い子どもの声が聞こえてきた
ふと顔を上げると、ブランコで遊んでいた子どもが「パパーッ！」とこちらに走ってくる

「「パパ!?」」

「マイケル…マイケーーール！」

「パパーッ!!」

『あ』

感動の親子の再会と言ってもいいのだろうが、その奥にある冷たい銃口がこちらに向いていることなどマックスは気づいていない

「その子に触らないで!!」

「！」

『すげぇ…』

怒鳴り声に抱き合う直前で硬直したマックスは、玄関口で猟銃を構えている女に驚き顔を青くしている
誰でも青くする。ありゃ怖い。鬼嫁だ

「ジョージから、あんたが逃げ出したって聞いたわよ！裁判に負けそうだからって、マイケルを誘拐しようっていうのね!?」

「ちが、そりゃ誤解だ」

「おだまんなさい!!」

「うひゃああああっ!!!」

マックスの足元スレスレに着弾した弾にドン引きするのは、我が一行だ

「Pi…」

『アマゾネス…』

「あれじゃ気分も悪くなるわけだ…」

『なんだろうな…前原と岡野のあのやりとりが可愛く思えてきた』

「Pi」

トラックの荷台で怯えているといってもおかしくないほど英二が私の後ろに隠れている
鬼の形相の女ほど怖いものはないだろう。強かすぎる、この国の女

「おーいジェシカ！」

「シュンイチ!?」

『……知り合いかよ』

鬼の形相だった女の人が毒気を抜かれて銃を下ろしていた

「シュンイチに感謝するのね、マックス。彼がいなかったらあんた今頃蜂の巣よ」

『冗談が冗談とも取れない上に目がガチだ』

リビングには所狭しと夕食が並び、水を飲みながらそんな本気の言葉を聞いて青ざめるしかなかった
これは怖い。この国の女ってホント、タフネス

テーブルの上のリンゴをナイフでカツンと1回で割ったってだけでもアマゾネス
ブルッと全身に鳥肌が立った