同志の思いを胸に【BANANA FISH】 (ページ30)

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恐怖や憎悪、あらゆるナーヴァスな感情を拡大させてしまう効果を持つバナナフィッシュに、誰も手を出すつもりなんてない
誰も買いたくないのに、1発でイカれちまうようなドラッグを誰が買うというんだ？

商売にならないのにどうして

これだけならただの粗悪な幻覚剤に過ぎないが、問題はある
これが外部からの刺激を受けやすいということだそうだ

薬物暗示がその代表だ
旧ソ連が開発した薬物による催眠暗示で、スパイ行為や容認暗殺を強要する戦略だ

だがあれは確実性が低くなり全く実用化されなかったという話だ

だが、バナナフィッシュはそれを100%可能にするそうだ

「たとえば、あれを飲まされた上で「移民は害虫だ、奴らを殺せ」と言えば、その通りのことが起こる」

「なんだって？」

「そんな、馬鹿な…」

信じられない表情で聞いた俺たちに、ドースンはさらに口を開いた

そのことに気づいたのは、ドースンの弟、エイブラハムだそうだ
もう1人の仲間が出来上がったばかりの薬を試して死んだと

ドースンは恐ろしくなって薬を処分したが、エイブラハムは隠し持っていた

そして、イラクで捕虜や兵士を

「モルモットにしたのか。仲間を…グリフを…」

俺の想像をはるかに超えた真実に驚愕するマックスの横で、怒りに歯を食いしばっていた俺は掴みかかった

「お前らがそんなもんを作ったせいで、兄貴も海斗もみんな…！兄貴は、兄さんはそのために、悪夢にうなされ続けて…」

バナナフィッシュのせいで、兄貴が廃人になった

バナナフィッシュのせいで、海斗が怪我をした

バナナフィッシュのせいで、バナナフィッシュのせいで

悔しくてやるせない思いで涙を堪えるように口を閉じた俺は、目から流れる涙を拭い取った

「だけどこれで、あのジジイの腹がわかった。奴はあんたの弟と組んで、合衆国と取り引きをするつもりだ」

「なんてこった…じゃあ、海斗がバナナフィッシュの情報を持ち出したのは」

「それに気づいたからだ。あとあと、この情報を持ち出そうとするディノの仲間達を考えてな」

だから、あいつは1人でやったんだ
何の関係もないのに、巻き込まれただけなのに、自ら死地に足を踏み入れている

「私は、弟が人体実験をしてことを知って薬を取り上げた
永遠に葬るつもりで…だが」

「処分しなかったんだな、あんたは」

科学者の頭なんか死んでも理解したくない