大王女様と山猫小僧10 (ページ33)

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88話ごめんねの時間ページ33

「少し、いいかな？」

『？』

ブランカさんと共に寮を出てゴミを捨てたあと、セントラルパークに向かう
7月末、来月はアッシュのバースデーのこの時期に、ブランカさんはきっと誕生日を祝いにきたのだろう

「英二くんから、キミがイタリアに行くと聞いてね」

『あー…』

「それで、アッシュのことだが…辛かったね」

『…うん。でも、それがアッシュの答えなのかもしれない…私の手紙をもらって幸せな時間を止めたかったとしても、少なからずどこかで思ってたのかもしれない
私が重荷だって、私の存在が重いって、見たくない、一緒にいたくないって』

「それは違う」

『でもそれは、アッシュにしかわからない
ねえ、ブランカさん。ブランカさんは考えたことある？愛した人が自分のことを忘れて嫌悪し敵対して、一緒に過ごしてみても結局は傷つけちゃって愛した人から拒絶された気持ち』

「…………」

『今、辛すぎて涙も出ないの…。でも、やっと前を向いて行けそうな気がしてきた
だから、イタリアに行くの…私なりのケジメで、さよならなんだ』

「それはちゃんと、本人に伝えたのかい？」

『どうせオックンが伝えてくれるから』

セントラルパークで遊んでいる子どもや犬、ランニングをしている人たちを眺めながら目を閉じる
いろいろあった

カルマが誘ってくれたから私はアッシュと出会うことができた

いろんな出会いが私を強くしてくれた

そして何よりも、アッシュという人に出会えた

(ねえ、殺せんせー…こういう別れ方もあるよね…
大切な人を思うが故に、離れること)

目を閉じてアッシュを忘れるように思う気持ちを仕舞い込む
いいんだ、これで…もう、会うこともない

そもそも、イタリアとアメリカは大西洋挟んでるだけだけど行くだけで疲れるし！
どうせイタリアまで追っかけてくることないでしょう！知ってる！

「だけど、彼はそう思ってないみたいだよ」

『…え？』

「彼は、キミの口からちゃんと聞きたいだろうね
ショーターの仇であっても…そうだろう？アッシュ」

ブランカさんが少し横にずれると、赤いパーカーに黒いシャツ、そしてダメージジーンズに赤いスニーカーを履いたアッシュがいた

なんで、ここに…

「私はセントラルパークの外にいるから、終わったら来なさい」

「…あぁ」