狩られる者。② (ページ6)

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第二章第十四話ページ6

イルミの歪な愛を見て、私は昔のことを思い出した。

「こんなんでいいんですよ。変に縛らなくたって....これでわかってくれますよ、キルアは。」

「デコピンはいらないだろ。」

少しむっとしたイルミは、私を睨む。

「怒るのも愛情表現の一つ。優しいだけじゃ駄目ですから。」

「..俺、長男だから..撫でられたの久し振りかも。」

そう言って頭を触るイルミ。
私よりも年上のはずなのに、なぜか今だけは年下のように見えた。

「..じゃ。」

イルミはそれだけ言うと、部屋から出ていった。
そして数秒たったあと、鬼の形相でキルアが部屋に入ってきた。

「俺の部屋から兄貴が出てきたんだけど！なんなんだよ！！！何があったんだよ！？」

「服持ってきてくれただけだから。」

「着替えるから後ろ向いてて。」と言うとすんなり後ろを向く。

後ろでガサゴソなにかしているのでちらりと見ると鞄の中に服や携帯を入れていた。

許してもらえたんだ。外に出ること。

私はすぐ着替えると「キルア！！」と名前を呼んでキルアに抱きついた。

「な、なんだよ！」

「ふふ、キルアー。」

ふわふわの髪の毛に顔を埋める。
この部屋なんかよりも何十倍ものキルアの匂い。

ああ、来てよかった。ここに来て、本当に良かった。

「よし！準備できたらゴン達のところに行こう！今、どのへんだろ？もう門は開けたかな？」

「執事室に行こうぜ！そこに行けば今ゴンがどこにいるかわかる。」

キルアの準備が整うと、すぐに部屋から出た。
そして、昨日入ってきた扉から出ようとすると、お母さんとカルト君が立っていた。

「キル！ムダよ、三人は帰ったわ。独房に戻りなさい。」

「いやだ。俺行くよ。」

「キル！」と手を出そうとすると、その手が止まった。

「退けよ。」

キルアはお母さんの横を通り過ぎていく。

「おじゃましました。」と私はお辞儀をして出ていく。

屋敷から出ると外の空気がおいしく感じた。
いや、ハンター試験の三次試験のあとくらいに空気がおいしい。たった一日出てないだけでこのザマだ。

「よーし、執事室へゴー！」

「待て。」

キルアは腕を私の前に出し足を止める。
ん？と前を見るとさっき別れたはずのイルミが立っていた。

「ああ、大丈夫。見送りに来ただけさ。」

「親父がキルを外に出していいって言ったんだから、俺はそれにしたがうよ。」

何が従うだよ。本当は寂しいくせに。

..ほんとしょうがない人だ。